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平成20年8月19日
清和政策研究会
夏季研修会 講演 「ips細胞の可能性と課題」
京都大学 再生医科学研究所 教授/
物質−細胞統合システム拠点・ips細胞研究センター センター長
 山中 伸弥 氏
司会・世耕弘成議員
 清和政策研究会の研修会を始めさせていただきたいと思います。
 それではまず冒頭、中山(成彬)事務総長よりご挨拶をちょうだいいたします。

中山成彬事務総長
 どうも皆さまお疲れさまでございます。久しぶりの清和研の夏の研修会でございますが、6月21日に通常国会が終わりまして約2ヵ月、中に内閣改造もありましたけれども、皆さん方それぞれ充実した夏を過ごされておるんではないかと思いますが、久しぶりに研修会を開こうではないかという気運が盛り上がりまして、今日こうしてやることになりました。ご参加いただきましてまことにありがとうございます。
 また、今日、「 ips細胞」、まさに日本科学技術研究の期待の星でございます山中先生が、たいへんお忙しい中を来ていただきまして、本当に心から感謝申し上げます。秋の臨時国会もどうやら波瀾含みのような感じもいたしますが、気持ちを引き締める上でも、充実した研修になりますように、皆さん方のご協力をよろしくお願い申し上げます。本日はありがとうございます。

司会・世耕弘成議員
 中山事務総長、ありがとうございました。
 続きまして、中川秀直代表世話人よりご挨拶をちょうだいいたします。

中川秀直代表世話人
 皆さん、こんにちは。ことのほか暑い夏、郷里にお帰りになられて奮闘なさっておられるさなかであろうと存じます。今年、皆さんのお声もございまして、平成17年に一度、東京での夏季研修会以来、今回3年ぶりの開催ということになりました。実はこのホテルで、清和会という名前で夏季研修会をかなりの回数続けております。私も最初に当会へ入会させていただいた30年近く前ですが、やはりこの会場だったのではないかなと。そう考えてみると、自分もずいぶん年取ったなと、そんな感じもするのでございます。
 われわれは初代会長福田赳夫先生の下、そして、歴代会長の下、常に国民の皆さんとともに、次世代に責任を持つ「良識ある保守の政策集団」として歩んできたわけであります。今日、本当に厳しい内外の情勢の中で、私どもが党内の第1グループとして全員一致結束をして正しい行動をとっていくということは、これからの日本の政治にとっても極めて重要なことであろうと考える次第でございます。
 現下、臨時国会も控え、たいへんな調整もしなければならない。それぞれのまたお役割を新しい人事体制の中でお受けになられて、努力をしていただいているさなかでございます。今回の研修会を通じて、さまざまな意見も交換をしながら、なおかつ重要課題が解決できますように、全力を尽くしていかなければならないと思う次第であります。
 簡単に3点だけ申し上げさせていただきたいと思います。
第1は、憂慮されているこれからの日本経済ということであります。足元の緊急対策は、政府・与党、総力を挙げていかなければならないと思います。しかし、それは財政再建と両立させななければいけない。「改革路線と両立し得る対策」でなければいけないと思います。となれば、先般、政策委員会を中心にお取りまとめいただきましたあの「清和骨太」(2008年7月4日「『増税議論』の前になすべきこと―『改革の配当』の国民への還元―」)の方向しか、この緊急対策においてもないのではないか、赤字国債というわけにはいかないのではないか、そのように強く思う次第でございます。
 同時にわれわれは、中長期のビジョンもこの日本経済についてつくり上げていかなければいけないと思います。日本経済にとって大きな活路は、やはり「アジアの中での日本」ということだと思います。アジアの新富裕層は日本を除いても約2億人いると言われています。日本の市場規模を合わせれば約3億、これがやはりわれわれの日本経済の新たな活路、ターゲットでもあろうと思います。
 日本は安全・安心、ハイクオリティ、これがアイデンティティというものであろうと存じます。今回、山中伸弥教授に ips細胞の話をしていただくことになりました。山中先生のこの発見、そして創造は、まさにノーベル賞級のものである、このように評価をされているところであります。日本のこれからの新たな発展の非常に重要な分野である。このような意味で、今日のお話をしっかりとわれわれは学ばせていただきたいと思う次第であります。
 第2番目は、改革路線についてであります。私は、「改革をあきらめた政党」に明日はないと思います。非常に重要なのは、今いろいろな「改革疲れ」というものが言われるときでございますけれども、この改革疲れ、これは本当に「改革のやり過ぎ」によるのか、あるいは「改革の遅れ」によるのか、しっかりと議論をしなければならないことでもあろうと思います。世界経済、あるいは世界のさまざまな動きというものは、音を立てて前に動いているところもある。そして、日々刻々と大きな変化を続けているわけであります。
 もちろん日本人の心とか伝統とか、変わってはならないものもございますが、それ以外の分野においては、やはり社会も企業も、地域も個人も、変わっていかなければいけないのだろうと思います。私も変わらなければいけない。皆さんにも変わっていただかなければいけない。それが「改革政党」ではないかと思います。
 生活が苦しいのは改革のやり過ぎなのか、改革の遅れている部分があるのか、よく吟味をし、議論をしていかなければならない。改革を続けて社会が成長発展していく中で安定を得る。それがやはり正しい道ではないか。静止した状態で安定、均衡するということは、世界の中の生かされているこの日本というもので許されることではない。やはり「動態的均衡」とでも言いましょうか、動きながら、変化をしながら均衡していく。そこに正しい安定もあるのではないかと思います。そういう改革によって、安定と、そしてまた発展を両立させる。それが極めて重要であろうと思います。
 「静かなる革命」という言葉を掲げて改革路線を推進するこの福田内閣、そして執行部を、われわれも全力で支えなければいけないというふうに思う次第であります。
 第3に、日米同盟のことについて若干触れさせていただきます。今日、福田総理はぶら下がり(取材)で、これから予定をされる臨時国会で、取り組むべき課題として、第1に経済と生活対策、第2に国際貢献、第3に消費者庁、第4に積み残し法案の処理という4点を挙げられる、こういうふうに聞きました。
 こう考えて見ると、論理的必然として、秋の臨時国会の最大の焦点は、あの給油支援法の延長問題であるとこのように考えます。もちろんねじれ国会の下で、野党民主党の合意を得て、これを成立せしめるということが理想であります。しかし、民主党があくまで政局第一主義で、この法案の成立に抵抗するのであるならば、われわれは福田総理の手で堂々と、われわれ日本は日米同盟の下で、国際協調の下で国際貢献をするそうした国家でいくのか、あるいはアメリカともヨーロッパとも離れてテロに屈伏する、そうした「孤立国家」でいくのか、それを堂々と民意に問うことも視野に入れなければいけないのではないか、私はそう考えるのでございます。
 いずれにしても、これから始まる国会を含めて、政局は極めて重要な「緊迫した状況」に進んでまいります。それを乗り切っていけるのは、この伝統ある、良識を持って保守の道を突き進んできたこの清和研の皆さんの団結と、そして正しい行動しかないと信じる次第であります。この研修会を通じて、更なるみんなの意見の一致をみて前に進んでいきますように、よろしくお願いを申し上げたいと思います。頑張りましょう! ありがとうございました。

司会・世耕弘成議員
 中川先生、ありがとうございました。
 それでは、講演のほうに移ってまいりたいと思います。本日の講演は「 ips細胞の可能性と課題」と題しまして、京都大学再生医学研究所の教授であります山中伸弥教授に講演をお願いを申し上げたいと思います。
 まず私のほうから今日、講師をお願いしております山中伸弥教授をご紹介させていただきたいと思います。山中教授は、昭和62年、神戸大学医学部をご卒業になりまして、そのあと大阪市立大学医学部、そしてアメリカのグラッドストーン研究所、奈良先端科学技術(大学院)大学を経まして、平成16年から京都大学の再生医科学研究所の教授をなさっております。そして最近では、新しくできました京都大学の ips細胞研究センターのセンター長でもいらっしゃいます。
 皆さんももう報道等でご存じだと思いますが、山中教授はヒトのいろいろな細胞に変わる可能性のある ips細胞の技術確立に2006年に成功されまして、そして昨年11月には実際に人間の皮膚の細胞でもできるという技術の開発に成功をされているところでございます。今、日本の科学者の中で最もノーベル賞に近い立場にいると言われている教授でもありますし、このips細胞の研究というのは日本に大きな可能性をもらすものということで、大きく期待をされているところでございます。
 今日、私がなぜ司会を務めさせていただいているかと申しますと、山中伸弥教授というよりも、山中君とは私は中学校、高校の同級生でございまして、6年間机を並べて一緒に勉強した仲でございます。生徒会では私が会長で山中さんが副会長(笑)、そしてクラブも一緒にやりましたし、家も近所でございまして、毎朝、電車に乗って一緒に通った、青春をシェアした仲間でもある。そのご縁で司会を務めさせていただいております。中学当時から山中さんは、やはり理想を追い求めて真理を探求するという性格があったというふうに思います。片や私は、落としどころと妥協点をいつも探っていたような中学生でございまして(笑)、今日の職業の片鱗はお互いに中学時代から見えていたのかなというふうに思います。
 本日は、この講演が終わって懇親会冒頭だけ顔を出していただいたあと、そのまま成田へ向かってオーストリアへ学会のために出張という、たいへん多忙な時間を縫ってここへ来てくれております。なぜ来ていただいたのかといいますと、恐らく、やはり政治の応援が非常に必要だということだと思います。今、アメリカとの間で激しい競争になっています。アメリカは、いろんな資金を注ぎ込んで、物量作戦できておりまして、ここをアメリカとどう競争していくかという面において、やはり財政的な応援というのは欠かせないという面がありまして、その応援のお願いもあって山中教授は、今日わざわざこの場に足を運んでくれているという面もあるかと思います。この ips細胞は、本当に日本の経済にとっても大きな効果をもたらす可能性のある研究だというふうに思っておりまして、今日はぜひ先生方にこの ips細胞について、十分ご理解をいただいて、今後のご支援をいただければと思います。
 それではご紹介させていただきます。京都大学再生医科学研究所の教授でございます山中教授でございます。どうぞご登壇お願いいたします(拍手)。

山中伸弥教授
 こんにちは。京都大学の山中です。世耕先生といいますか、世耕君といいますか、ご紹介ありがとうございました。今、世耕先生から簡単にご紹介していただきましたが、私と世耕君は家が近くでありまして、そこから大阪の中学校、高校まで電車で、近鉄で通っていたんですが、もう1人親友がおりまして、3人でいつも歩いておりました。ぼくは世耕君よりだいぶ背が高いんですけども、もう1人の友だちもぼくと同じぐらい高くて、何でかわからないんですが、歩くときは必ず世耕君が真ん中で、ぼくともう1人が両端を囲むということで、実はぼくの家内も同級生なんですが、いつもその姿を見ては、格さん、助さんに守られた水戸黄門のようだったと思っていた(笑)、というふうに言っておりました。
 そういうことで、世耕先生には、いろいろ秘密を握られておりまして、今日は万難を排してこの場にやってまいりました(笑)。ただ、ぼくも世耕君の秘密をいろいろ握っておりまして(笑)、いつでも反撃には出られるというふうに考えております。
 しかし本当の理由は、今、世耕先生からお話ありましたように、今の研究の現状、それから国際協調と競争、両方とも起こっているんですけれども、そのあたりをぜひご説明して、これまでもものすごい支援をいただいておるわけですが、今後もさらにお願いしたいということで、この場にまいりました。非常に場違いなんですけれども、1時間弱お付き合い願えたらと思います。
 それでは、たいへん失礼ですが、この以降は向こうで座って、スライドを映写しながら講演をしたいと思います。
(スライド映写)
山中教授 これが私たちの今の研究室のメンバーでございます。今だいたい40名くらいのメンバーでやっております。私はここにおりますが、隣にちょっと変なのが混じっているんですけれども、彼女といいますか、この人は私の愛人でも何でもなくて、実は男子学生でありまして、こういういろいろ変わった人間が集まって研究が進んでいくというのが研究の面白いところだと感じています。本当に若い人たちばっかりなんですが、彼らが日夜、本当に昼夜なく頑張ってくれておりまして、彼らの頑張りで出ている成果であります。
 私は、今は研究しかしていなんですけれども、もともとは整形外科医でありました。もう20年くらい前ですけれども。ですから、あくまでも基礎研究はやっておりますが、最終的な出口は、患者さんに役に立ちたいという思いは本当に強く持っています。いろいろな病気、ケガが治らないわけですけども、そういった人に何とか基礎研究で少しでも役に立ちたいというのが思いです。
 スライドに映っているこの女性は、非常に美しい女性で、それもそのはずで、1999年のミスアメリカに選ばれたニコール・ジョンソンさんという方です。ほんと健康そのものに見えますが、実は彼女は糖尿病の中でも1型、もしくは若年型と言われている糖尿病と闘っている女性です。これはあとで説明しますが、非常に大変な病気でありまして、この病気を持ちながら、こういうミスアメリカという大変な仕事をこなすというのは、ほんとに超人的なことだったと思います。
 糖尿病について非常に、今日は古川(俊治議員)先生のようにお医者さんも混じっておられますので釈迦に説法の部分もありますが、簡単にご説明しますと、ご存じのようにインスリンと呼ばれているホルモンが不足する病気です。インスリンは何をするかといいますと、この映写のマンガにありますように、血液の中で、食事の中に含まれている栄養、ブドウ糖を運んでいって、筋肉であるとか脳であるとか、ブドウ糖をエネルギーとして必要とする臓器に運んでいって引き渡すという、幼稚園の引率の先生のような大切な役割をしています。このインスリンがいろんな理由で不足してしまうのが糖尿病でありまして、突然、先生がいなくなるわけですから、子どもたちはさまよってしまって、血管の中をいつまでもウロウロしている。ということで、血液の中の糖の成分がどんどん上がっていきます。コーヒーに砂糖を少しだけ入れると何ともないんですが、どんどん入れていくと、どろどろになっていきますが、言ってみたらそれと同じようなことが起こってしまいます。その結果、血液を包んでいる血管でありますとか、神経、代謝障害、さまざまな病気、体の異常が起こってくるというのが糖尿病であります。手足の血管が傷害を受けますと壊死といいますか、腐ってしまいますし、心臓の血管が傷害を受けると心筋梗塞ということになるわけであります。
 このインスリンというのは、これもご存じだと思いますが、膵臓という臓器がつくっています。膵臓は胃の裏くらいにあります1個しかない臓器であります。長さ15pくらいでありまして、非常に働き者の臓器でありまして、二つの仕事をしています。
 一つは、消化液をつくるということで、十二指腸に管を出しておりまして、このように消化液をどんどんつくっていると。外分泌と呼ばれる作用であります。
 もう一つがインスリンのようなホルモンをつくるという仕事でありまして、こちらは内分泌と呼ばれるわけでありますが、膵臓の細胞すべてがホルモンをつくっている、インスリンつくっているわけではありませんで、ここに書きましたように、一部の細胞だけが島状に固まっていてインスリンをつくっています。それ以外の部分は消化液をつくっていると。この島状の固まりのことを膵島、膵臓の島といいますが、インスリンというのはこの膵島の部分だけがつくります。ちょっと専門的で申し訳ないんですけれども。
 糖尿病というのは、二つタイプがございまして、大人に多いといいますか、生活習慣病、昔、成人病と呼ばれていました糖尿病は2型糖尿病です。こちらは非常に患者さんが多くて、500万人〜1000万人ぐらい日本でいるんじゃないか。この原因は肥満が原因でありまして、肥満になることによって、いろいろな理由があるんですけれども、インスリンが効きにくくなる。先生の数が相対的に足らなくなってしまうというのが、この2型糖尿病の原因であります。こちらはなりやすさは遺伝すると言われておりまして、私も、祖父と父が糖尿病でしたので、非常に心配して毎日走っているわけでありますが、ただ、こちらの治療法は肥満解消ということで、食事療法、運動療法というのが中心になります。
 それと、同じ糖尿病なんですけれども、全然違うのが1型糖尿病であります。こちらは子どもさんに多いというのが特徴で、若年型と言われるゆえんであります。2型よりは少ないんですが、それでも30万人、50万人という方が日本で患者さんじゃないかと。この原因ですけれども、インスリンをつくる膵島の細胞がつぶれてしまいます。免疫の異常と言われています。免疫というのは、外から入ってきた細菌、バイ菌等を殺すのが免疫なんですが、何かの間違いで自分自身の細胞である膵島を潰してしまうというのがこの1型糖尿病の原因です。ですから、インスリンそのものが全くつくられなくなってしまいます。これは遺伝しないと考えられていまして、だれがいつ起こってもおかしくないという病気であります。
 2型のほうは、走ったり食事制限でよくなるんですけれども、1型はそういうことでは全く効果がありませんで、外からインスリンを足してあげるしかありません。それが非常に問題でありまして、インスリンというのは非常に不安定な物質です。ですから飲み薬にできません。注射するしかありません。注射しても不安定ですので、1日に数回、3回、4回注射する必要があります。子どもさんがかかって、1日に3回、4回注射ということで、そんなに病院に行っていたら学校にも行けませんので、結局は自分でやるしかないということで、このような冊子をつくって、「ボクにもできたよ インスリン注射」ということで、この子たちは自分で一生懸命注射するということであります。ぼくのような大人でもいまだに注射はいやなんですけれども、この子たちは自分自身でやらないとダメ。それも一生やらないとダメということであります。
 ただ、いろんな注射の針の会社の努力等で、今はずいぶん注射針も細くなって、痛くなくなっていますし、患者さん、非常に頑張る子が多いので、注射そのものはみんな頑張ってしようとするんですけれども、問題は注射したらそれで終わりかというと、そうじゃなくて、効きすぎてしまう場合が頻繁にあります。体調は日々変わりますし、ごはんの量も日々変わります。運動量も日々変わりますので、同じ量のインスリンを打っていると、時として効きすぎて低血糖になってしまう。これは皆さん、お忙しくてごはん食べる時間がないときに経験されたことがあるかもしれませんが、非常に苦しいです。冷や汗がだらだら出てきて、放っておくと意識がなくなって、さらに放っておくと死んでしまうこともありますので、ですから、これが患者さんを苦しめます。真面目にちゃんと注射していてもこういう低血糖に襲われると。この低血糖がいやで治療をやめてしまう子どもさんもたくさんいます。やめてしまうとどうなるかというと、最初はなんともなくても、10年後、20年後に、先程言った血管の障害等が出てきて、10歳くらいでこの病気になって全く治療しないと、30歳くらいで心筋梗塞になってしまうということも起こり得ると。そういう可能性のある病気であります。ですから、すぐに命にはかかわらないんですが、子どもさんたちのクォリティー・オブ・ライフといいますか、本当に大変な病気で、こういったことと闘いながら、先程のニコール・ジョンソンさんはミスアメリカを勝ち取って務めあげたというわけであります。
 では、これだけ医学が進んで、もう20年、30年前からインスリン注射というのは行っています。なんとかならないのかということであります。それを考えますと、1990年代くらいからものすごく臓器移植が発展いたしました。心臓の悪い方に心臓移植をするということが、外国を中心にものすごく進んだわけです。もう心不全で全身が浮腫で腫れて寝たきりだった人が、心移植することによってまた走れるようになる。そういう方のオリンピックまで外国ではあるわけであります。そのように非常に臓器移植が進みましたので、じゃ1型糖尿病の子どもたち、患者さんは膵臓が悪いということがはっきりしているわけです。それだったら膵臓を移植したらどうかという考えが当然出てきます。
 それは当然なんですが、非常に問題がありまして、まず1人に1個しかない臓器であるということと、消化液をつくるということから、心臓が止まった瞬間に、自分自身を溶かしだしてしまうということが起こってしまいます。ですから、脳死の人からいただくしかない。脳死移植というのは、日本では年間10例あるかないかというのが現状でありますので、なかなかこれは行えない。
 また、膵臓というのは本当に豆腐のような軟らかい、血管だらけの臓器でありますので、手術そのものが非常に難しくて、手術中の事故で亡くなってしまうこともあり得るというようなすごい手術になりますので、リスクが多すぎて、ベネフィットの割にリスクが多すぎるということで、この治療は基本的には行われません。
 ではもうお手挙げかといいますと、医者もいろいろ頑張っておりまして、素晴らしい治療法がカナダで開発されました。それが1文字違いなんですが、膵島移植と呼ばれる治療であります。これは先程と何が違うかというと、臓器移植ではなくて、この膵臓からインスリンをつくるのは膵島と呼ばれる一部の細胞だけですので、その細胞を取り出そうという技術であります。7〜8年くらい前にカナダのエドモントン大学のグループで、膵臓から膵島だけを非常に効率よく取り出すという技術が開発されました。
 そうしますと、もはやこれは臓器移植ではありません。バラバラの細胞ですので、大手術をする必要はなくて、患者さんに、血管の中に注射をするというだけで細胞移植することができます。1時間くらいでできます。ですから、外科医じゃなくても内科医でできるというような手術であります。
 注射するとどうなるといいますと、血液というのはすべて肝臓に流れ込みます。お酒等を解毒するために肝臓に流れ込むわけですが、この細胞も肝臓に流れ込んで、肝臓で生着すると。肝臓の中でインスリンをつくります。本来とは違う場所なんですけれども、一向に構わないということがわかりました。この治療をしますと、これまでインスリンが必要だった人がもう要らなくなる。もしくは、インスリンはまだ注射しないとダメでも、量が減って、低血糖発作の頻度が下がるということがわかりまして、本当に効果のある治療だということが実証されています。
 しかし、これも問題がありまして、やはり膵臓が必要ということには変わりがなくて、脳死の方からいただく。もしくは脳死の方を待っておられないので、ご家族の膵臓を半分だけいただくというような、いわゆる生体移植ということをする必要があります。ですから、やりたくてもなかなかできない。この日本では、膵島移植は私たち京都大学付属病院がいちばん多い数を、大部分京大でやってきましたが、それでも100例もまだできていないというのが現状で、ごく一部の方にしか福音にならないというのがこの治療であります。
 このように、1990年代というのは移植医学がものすごく発達しました。移植医学というのは、臓器であるとか細胞をほかの人、多くの場合は脳死の方、もしくはご家族、日本では脳死がほとんどないので生体移植ということが行われているわけであります。しかしこの問題点は、やはり供給者、ドナーが圧倒的に不足するというのが問題点であります。移植さえすればよくなる人が、いろんな病気で、山程いるのに細胞、臓器がなくてあきらめざるを得ないと。亡くなっていく人が後を絶たないというのが現状であります。そういったことから、臓器売買であるとか、外国に行って臓器を不法に手に入れるといったようなことも起こってしまうわけであります。
 それに対しまして、私たちが今目指しています再生医学というのは、私の考えでは、移植医学の一部だというふうに考えていますが、従来の移植医学との違いは、これまではほかの人からもらったのをそのまま移植するという治療だったのですが、再生医学では、臓器や細胞を人間の手でつくり出す、もしくは増やしてあげると。それから移植するという点で、従来の再生医学とは全然異なるというふうに考えています。
 この再生医学を行う上での切り札の一つとして考えられていますのが、es細胞であります。胚性幹細胞と呼ばれています。この胚性幹細胞は、名前のとおり人の胚、受精卵から科学者が取り出してつくった細胞であります。ですから、私たちの体どこを探してもこういう細胞は存在しません。ネズミで、今から30年くらい前に初めて科学者が成功しました。人間では10年前に、ようやくアメリカの科学者がつくったという、非常に歴史の浅い幹細胞であります。
 では人間の場合、この受精卵をどうやって手に入れるかということであります。わが国でも、京都大学の、私たちの研究所の前の所長であります中辻(憲夫)教授が、これまで3ライン――3種類のヒト、日本人のes細胞の樹立に成功していますが、ということは、少なくとも三つの受精卵が必要であったということでありますが、どうやって手に入れているかといいますと、これは不妊治療の際に余ってしまう受精卵を利用させていただいています。いわゆる試験管ベビーと言われるものでありまして、30年前に試験管ベビーの第1号が生まれまして、30歳に今年なられたわけですが、当時はたいへんな物議をかもして大騒ぎになったと思いますが、今はごく当たり前の治療になっています。体外受精です。卵子と精子を取り出して体外で受精して、また女性に戻すと。日本でも、ちゃんとした統計はないんですけれども、一つの説によると、日本人の生まれてくる赤ちゃんの1%は、今、体外受精で生まれているんじゃないかと言われているくらい一般的な治療になっています。その際に必ず、日本とかアメリカのやり方では、余計にというか、10個くらい受精卵を受精させます。そのうち1個か2個だけを女性に戻しますので、毎回必ず基本的には余ってしまうと。余った受精卵をどうするかといいますと、いったんは液体チッソで凍らせます。失敗した場合に使うとか、成功しても二人目が希望される場合に使うということも考えて、いったんは凍結いたしますが、細胞を凍結するのってものすごい場所とおカネがかかりますので、すべて一生永遠に凍結するわけにはいきません。結局はやがては廃棄しているというのが現状でありまして、その捨てられる運命の受精卵を、カップルの承諾を得て使わせていただくというのがヒトのes細胞のつくり方であります。
 これが、es細胞がなぜ切り札と言われているかといいますと、いわゆる万能細胞と言われるからでありまして、なぜ万能かといいますと、二つものすごい性質がございます。
 一つ目は、受精卵と同じ性質なんですけれども、受精卵というのは1個の細胞から私たちの体を構成している200種類以上の細胞すべてなっていくわけですが、このes細胞も、es細胞から神経であるとか筋肉であるとか、また膵島の膵臓の細胞であるとか、理論的には少なくともすべての細胞をつくることができます。
 2番目の大切な性質というのは、es細胞は体外でほぼ無限に増やすことができます。この二つの性質があるので、es細胞を使えばヒトの神経の細胞とか心臓の細胞とか、そういう移植であるとか、いろいろな創薬、薬の研究等に必要な細胞、ヒトの細胞を必要なときに必要な量だけ準備できるということから期待されているわけであります。
 例えば、先程の1型糖尿病の患者さんのことを考えますと、es細胞をまず必要な量だけ増やしておいて、ここから膵臓の細胞をつくるという研究が今、世界中で進んでいます。これが完成しますと、この細胞を膵島移植の細胞として患者さんに移植するという治療が期待されているわけであります。そうしますと、理論的には、場所とおカネがあればということですけれども、1個の受精卵に由来するes細胞があれば、日本中の30万人の患者さんの移植に必要な膵島細胞をつくることができると。そういう力があるのがes細胞ということになります。
 このes細胞が期待されているのは糖尿病だけではありませんで、es細胞からは、この中段に示しましたようなさまざまな、神経の細胞、心臓の細胞、肝臓や骨の細胞等いろいろな細胞をつくることができますので、この右側に書いてありますようなパーキンソン病とか脊髄損傷、心臓の病気、肝臓障害、骨粗鬆症、白血病、これは1例ですけれども、数多くの病気やケガに対する治療として大きく期待されているわけであります。
 しかしこの細胞ができたのは、先程言いましたように、ヒトes細胞ができたのは10年前であります。10年間、非常に高い期待を集めながら、これまでのところ、日本だけでなくて世界で実際このes細胞が患者さんの治療に使われたということは1例もありません。なんでそんなに時間がかかっているかというと、いろいろな可能性とともにes細胞には大きな問題点もあるからであります。
 どんな問題点かといいますと、いろいろあるわけですが、その中でも大きな問題点はこの二つが考えられます。両方ともes細胞をつくるのに受精卵が必要だということに由来します。受精卵が必要ということは、移植が必要な患者さんからはつくることができません。受精卵というのはゆくゆくは子どもになり、親子は他人の始まりですから、親子で移植すると必ず拒絶反応が起こりますので、患者さんご自身の細胞ではないということから、拒絶反応がどうしても起こってしまうということが一つ目の問題であります。
 二つ目は、根本的に人間、患者さんを助けるためとはいえ、受精卵を使っていいのかという倫理的な問題が大きく立ちはだかっています。わが国においては、一応いいんだということで研究もゴーサインが出ておりますし、すでに3ラインの日本人のes細胞ができているわけでありますが、日本の中でも反対される方は多いですし、それから世界的に見ても反対する人は非常に多いと。恐らく反対している人のほうがまだ多いというのがこの細胞であります。
 例えば、隣の国の大統領であります(ジョージ・)ブッシュ大統領も反対の立場をとっておられます。これは本当に釈迦に説法でありますが、アメリカという国は大統領に拒否権という制度がございます。議会で法案が通っても、大統領が拒否権を発動するとなきものにできるわけであります。ブッシュ大統領は、ご存じのように非常に、私のような一般の目から見ていますと、戦争を始めたりして非常に強いというかわがままというか、そういうイメージがあるんですけれども、非常に不思議なことに、拒否権は1期目では一度も発令されませんでした。2期目になって初めて発令されたんですが、その発令した法案がヒトのes細胞の研究に連邦のおカネを遣うという法案が上下院で通ったんですけれども、それを初めて拒否権発動されました。そのあともう一度その法案が通ったんですけれども、また拒否権発動されましたので、本当に強く反対されています。ただ、聞くところによりますと、次の(バラク・)オバマさんと(ジョン・)マケインさんは、両方ともここまでは反対していないということですので、アメリカも少し変わっていくかもしれません。
 ということで、このように、es細胞は非常に可能性があるんですけれども、問題点も多いということで、研究や応用が進まないという状況がずっと続いていましたので、私たち自身の研究にここからちょっとだけ入りますが、なんとかそういった問題点を克服したいということを目標にして研究を開始しました。ちょうど先程、世耕先生に紹介していただきましたが、2000年に奈良先端大のほうで自分の研究室を持たせていただきまして、そこでまず細々と始めたのがこの研究であります。es細胞の持っている拒絶反応であるとか、ヒトの受精卵の利用という問題を克服したいと。具体的にはどうするかといいますと、受精卵を使わずに、患者さんご自身の皮膚細胞のような、体の細胞から直接、es細胞に類似した万能細胞をつくれないかという研究を2000年ころから始めました。最初は研究費も少なくてなかなか進まなかったんですが、2003年に科学技術振興機構(jst)のほうから5年間のプロジェクト、ちょうど今年が最終年度で、また次の新たな5年間のプロジェクトは決めていただいんたんですが、このjstのcrestと言われる支援をいただいたことが、この研究が一気に加速した原因といいますか、そのおかげで一気に加速することができました。
 その結果、今日はややこしい話は一切省きますが、非常にこれは難しくて、20年、30年かかるんじゃないかと思って開始したんですけれども、妙な幸運にも恵まれまして、2006年にまずはネズミを使った実験で、皮膚の細胞に、ここに示しました4つの遺伝子、oct3/4、sox2、klf-4、c-mycという4つの遺伝子を導入するとes細胞にそっくりな細胞が出てくるということを報告することができまして、この細胞のことを人工多能性幹細胞( ips細胞)というふうに名付けたわけです。そしてマウスでは2006年に樹立できましたが、人間での達成にどれくらいかかるかなと。実はes細胞というのはマウスから人間に行くのに17年かかりまして、この ips細胞もそれくらいかかるかなと思ったんですが、 ips細胞は1年でマウスからヒトに行くことができて、2007年、去年にヒトの ips細胞の樹立というものを報告することができました。 ips細胞というのは、induced pluripotent stem cellという英語の略であります。
 これは顕微鏡の写真で、何が何だかちょっと、研究されていないのでわからないかと思いますが、ここでお伝えしたいことは、ヒトのes細胞とヒトの ips細胞というのはそっくりだということであります。
 日本はヒトのes細胞、一応つくれますし、それから研究も国のおカネを遣ってできます。しかし、日本というのは非常に不思議なことに、世界でも類を見ない非常に厳しい運用をヒトのes細胞研究に求められていまして、実は、私は再生医科学研究所におりまして、es細胞をつくった研究所にいるわけで、私の座っている教授室は2階にありまして、その地下1階には、真下にes細胞の培養室があるわけですが、私は日本ではヒトのes細胞を使うことは許されていません。ですから、見ることも許されていませんので、このes細胞というのは、実はアメリカにも小さい研究室を持っておりまして、そちらで撮った写真であります。アメリカはこれまた不思議な国でありまして、あれだけブッシュ大統領が反対していて、国のおカネというのは非常に遣いづらいんですけれども、民間のおカネや、それからカリフォルニアの場合は州のおカネを遣っていくらでも研究ができるということで、私もアメリカの研究室に行った最初の日にこの細胞を使えるようになったというような、日米で変な差がありまして、これはアメリカで撮った写真ですが、右側の、ヒトの ipsは京都で撮った写真であります。
 ですから、見た目は ips細胞とes細胞は非常によく似ているんですが、では能力的にも本当に似ているかということで、es細胞であるためには、 ips細胞からいろんな細胞ができないとes細胞とは呼べません。私たちのこれまでの研究で、実際 ips細胞からいろんな細胞ができる。心臓の細胞であるとか神経の細胞であるとか、いろんな細胞ができるということが実証されています。
 二つだけお見せしたいんですけれども、これはまず ips細胞が血管をつくっているところであります。細胞の塊であったところから、こういうビュッと枝が伸びているのがわかると思いますが、これは立派な血管でありまして、もともとこれは皮膚の細胞だったんですが、 ips細胞にすることによって、こういう血管に変えることができるということがわかっておりますし、それからこれは、本当は拍動するはずだったんですが、ちょっと拍動しなくなってすいません。
 ちょっとこうなりますとしばらく休憩をいただく必要がありますので、少しお待ちいただかないとダメなんですけれども。いつもこの写真を見せると2回にいっぺんくらい固まるので、すいません。今日はどっちかなと思ったんです。
 コンピュータを最近新しくしたんですが、どうも新しくしてからトラブルが続いておりまして、古いのに戻したいんですけれども。
 今のスライドをもう一度見せる勇気はありませんので、次のスライドをちょっと……。先程のスライドでお見せしたかったのは、ビーティングというか、拍動する心臓の ips細胞ができるということであります。それは見たことにしておいていただいたらと思います。
 この写真は拍動しないんですが、これは ips細胞そのものでありまして、これでお示ししたいのは、いろんな年齢層、6歳の女の子から81歳の女性まで、さまざまな日本人の皮膚の細胞から ips細胞ができるということがすでにわかっていますので、年齢とか人種、アメリカ人からでも日本人からでも、黒人の人からでもできるということがわかっていますので、非常に汎用性の高い技術だということがわかっています。
 こういった細胞ができたことから、今、私たちが行っている研究はこういう研究であります。これまでというのは、普通の健康な方、ボランティアの方の皮膚の細胞から ips細胞を最初つくって研究していたわけですが、今は京都大学の附属病院等の多くのいろんな病気の患者さんの体の細胞、皮膚の細胞から ips細胞をつくるという研究を進めています。そしてつくったあとで ips細胞はいくらでも増やすことができますので、増やしたあとで神経の細胞とか心臓の細胞をつくるということを今行っております。
 これは、例えば大人の心臓の細胞であるとか神経の細胞というのは、細胞分裂しない細胞です。全く増えません。例えば心臓の悪い方の心臓の細胞を、その方が生きている間に採るということは、これまでの技術ではできるわけがありません。不幸にして患者さんが亡くなった場合、解剖させてもらえた場合には少しだけ心臓の細胞とか脳の奥の神経の細胞をいただくということはこれまでもできたんですけれども、ただ全く増えませんので、すぐなくなってしまう。ところが、この技術を使いますと、患者さんからいただく必要があるのは、本当に小さい皮膚の断片だけで大丈夫です。今はいろいろな研究が進んでいまして、髪の毛1本からもできるという報告も出ていますので、本当に患者さんが生きている間に ips細胞ができる。そして、そこから心臓の細胞とかをつくると、その患者さんと同じ遺伝子を持った、その患者さん自身の心臓の細胞とかを大量につくることができる。そういう技術でありますので、当然、先程お見せしましたような再生医学、1型糖尿病。インスリン注射が必要なのは1型糖尿病ということでご紹介しましたが、実は2型の糖尿病も本当にひどくなってきますとインスリンがつくられなくなってしまいます。インスリンが、2型というのは相対的に足らなくなるので、膵臓は頑張ってインスリンを必死になってつくろうとするんですが、そのうち疲弊してしまって、全くつくれなくなってしまう。そうすると、2型であってもインスリン注射が必要になります。
 ぼくの父が、実はそうだったんですけれども、20年くらい前でしたが、糖尿が本当にひどくなって、インスリン注射が必要になってしまって、ぼく、医学生のときでしたが、毎日注射したのを憶えています。ですから、1型だけではなくて2型の方も含めて、再生医学でこういったことができるんじゃないかというふうに期待しています。
 ただ、これはつくった私たち自身が安全性の問題というのを非常に慎重に考えています。なぜかといいますと、es細胞はもともと万能性の受精卵を採ってきてそこからつくる細胞ですのでいいんですけれども、 ips細胞は、いったん万能性を失っていた皮膚の細胞を、ある意味無理やり時計の針を巻き戻してつくる万能細胞ですので、そういう無理やりなことをするとだいたい細胞というのは反乱を起こしてしまう可能性があって、細胞にとっての反乱というのは、やはりがん化、腫瘍ですので、冗談ではなく本当に時どき夢を見るんですが、これでうまく研究が進んで、患者さんにこういう細胞を使って、いったん患者さんがよくなる。しかし、1年くらいすると移植したところで腫瘍ができてしまってその患者さんが亡くなってしまうというような、ぼくにとっては悪夢なんですが、そういう恐れがありますので、こちらは再生医学の応用というのはまだまだ基礎研究というのが必要です。
 と同時に、そういう私たちのような研究者にとって政治家の皆さんにお願いしたいのは、十分に安全性を検討した後にもちろんそういう治療に移るんですけれども、万が一不幸にして研究ではわかり得なかったような副作用が出てしまったときに、じゃその研究をやって、最後に患者さんにその治療をした研究者なり医師が責任を負わされるんだろうかという、負わないとダメだというような気もしますが、しかしそういうことを考えるとなかなか実行に移せなくなるという点がありますので、そういった本当に慎重な検討が必要だと思うんですけれども、実際、患者さんの移植に移る際の免責といいますか、そういったことも議論していただけたらというふうに考えております。
 前置胎盤の妊娠の異常の患者さんを外科医が必死になって救おうとしたが、力及ばず患者さんが亡くなり、その外科医を警察が逮捕したということがありました。私も元外科医ですから、私から見ると許しがたい事件が昔ありましたが、それももちろんいろんな意見はあると思いますが、その判決が明日出るという話を先程世耕先生から聞いたんですけれども、私たちのやっている研究も同じようなことに直面しながら行っております。ですから、これは非常にまだ時間はかかりますが、この ips細胞というのは、実はもう一つ使い方がありまして、そちらの使い方は、もう明日にでも使えるというふうに期待しています。
 それは、再生医学ではなくて、病気の原因の解明であるとか、それから創薬、薬の探索、そして副作用の評価、そちらの使い方であります。患者さんに移植しませんので、安全性にそこまでも神経質になる必要がありません。患者さんの遺伝子を持った、患者さんが病気にかかっている部位の細胞を大量につくれますので、こういった創薬で非常に役に立つというふうに期待しています。
 例えば、ここでちょっとまた病気の話で申し訳ありませんが、心臓の病気でqt延長症候群、名前はどうでもいいんですが、心電図で異常が起こる病気です。心電図というのは、ぼくも最近あまりわからなくなってきましたが、p波からq波、r波、s波、t波とありまして、このq波からt波が延長するのがqt延長症候群なんですが、これは普段こういうことがない人であっても、薬、それも普通のお薬、抗生剤とか胃薬とか風邪薬といった普通の薬を飲むことによってこういう異常が起こる場合があります。しかし、ちょっとくらい心電図でこれくらいの異常があってもべつに大したことは起こらないんですが、この病気が怖いのは、これに引き続いて、こういう致死性の不整脈になる可能性が非常に高い。この最初のほうはまだましなんですが、このへんは、なんというか、一応、心臓は拍動しているように思われるかもしれませんが、これは引きつっているだけでありまして、ポンプとしては全く働きませんので、これは、これが起こった瞬間に患者さんは意識を失います。1分もすると亡くなります。本当にいろんな原因でこういう致死性の不整脈が起こりますが、今のqt延長症候群でも起こります。脱水とかいろんな、電解質のバランス異常でも起こりますので、明日ゴルフをされる先生はぜひ気をつけていただきたいんですけれども(笑)。
 本当に患者さんにとったら風邪薬を飲んだだけでこうことでひどい場合は亡くなってしまうということで、患者さんにとってもたまりませんし、それから薬を何十億、何百億というおカネをかけて市場に出した製薬会社にとってもこれはとんでもない問題でありまして、こういうことが続きますと市場撤退をする必要がありますので大変な問題です。ですから、何とか開発の段階でこういうことを起こすかどうかを予見したいと。でも、これ動物実験では絶対わかりません。人間でしかわかりません。治験といいまして、少数の方に投与してもこれは見逃される可能性があります。
 今どうするかというと、こういったことを起こす素因のある方というのがわかっていますので、そういった方に実際、薬のほうを投与するしかありません。しかし、これは非常に、言ってみたら怖い検査でありまして、先程のようなことが起こるかもしれないんですから、もし起こってしまうと、今はやりといいますか、aedという救命措置をしないとダメという、非常に危険な検査です。なかなかできません。しかし ips細胞を使いますと、こういった患者さんから皮膚の細胞さえいただくと ips細胞ができて、心臓の細胞が、先程お見せするはずだった心臓の細胞ができますので、そうしますとシャーレの中で拍動している心臓の細胞の心電図を取ると。このような応用もできる技術ですので、我が国初の技術だという点もありますから、ips細胞の技術は汎用なものであると考えています。
 しかし、先ほど強調しましたが、安全面での課題もありますし、それから知的財産、特許の確保という問題もあります。あとでご紹介しますが、こういった技術が本当に患者さんのところに行くまでには、一つの特許では全然ダメでありまして、何十という特許が合わさってはじめて完成する技術であります。ですから、最初の基本特許は京都が抑えられるかもしれませんが、それ以降の特許を頑張って抑えていかないと、結局は日本では非常に使いにくいという技術になりかねません。実際、ヒト ips細胞の樹立だけを見ても、私たちが1年でマウスから人間に移行できて喜んでいたんですけれども、私たちだけではなくて、ほかのグループにとっても、私たちと同じ日にアメリカのウィンスコンシン大学がヒトの ips細胞の樹立報告をしましたし――去年の11月ですけれども――今年になってからは、ハーバード大学とかカリフォルニア大学、それからバイエル薬品、北京大学、ジョンズ・ホプキンス大学と、論文にしただけでもこれだけの大学が ips細胞の樹立を報告しています。特許のことは公開されない限りわかりませんけれども、予想するに、こういったところの多くは論文発表の前に特許を出願していると思われます。
 海外の動向で、今ご紹介しましたように、すでに複数の海外のチームがヒト ips細胞を樹立しておりますし、それからアメリカは特に研究費も、ブッシュ大統領は幹細胞研究はわりと反対なんですが、アメリカは州ごとにものすごい研究費を遣っています。カリフォルニア州、アーノルド・シュワルツェネガー知事が非常に頑張っておられまして、10年間で3000億円を幹細胞研究に遣うという、信じられないような額を注ぎ込んでおられます。マサチューセッツ州、ハーバードのある州は10年で1200億円ということで、これの多くはハーバードに流れていくと思われます。もちろんすべてが ipsではないんですけれども、今のアメリカの ips熱を見ますと、この多くは ipsに流れていってるというのが現状であります。
 ただ、わが国でも非常に迅速な支援をいただいております。去年の11月にヒト ipsの樹立を報告したわけでありますが、12月にはすでに文部科学省と、先程のjstが ips細胞研究の追加予算を決定していただきました。
 これは去年度、平成19年度、もうほとんど過ぎていましたので、ぼくはこの追加予算というのは20年度予算のことだとばっかり思ったんですけれども、jstのほうは19年度予算で、去年度の間に研究を開始しますということで、本当に驚いたんですが、今年の1月には京都大学の中に ips細胞研究センターというものが発足いたしました。3月には文部科学省が京都大学と慶応大学、東京大学、そして理化学研究所の4ヵ所を ips細胞の拠点として重点的に支援するということが決まりましたし、それから同じ3月には京大の ips細胞研究センターの新しい建物の建設も決めていただきました。今、設計と、それから京都ですから、史跡といいますか遺跡の調査を行っているところでありまして、毎日、遺跡が出ないことを祈りながら、「出たら言ってください。戻しに行きますから」と言っています。
 この ips細胞研究センターですけれども、ご存じのように、去年、文科省が世界と勝負できる研究施設をつくるということで、world premium institute(wpi)ということを、日本の中で5ヵ所設定していただきました。そのうちの一つとして京都大学が選ばれておりまして、それがes細胞をつくられた中辻先生が拠点長の、物質−細胞統合システム拠点という非常に難しい名前の拠点であります。その拠点に3本の研究の柱がございまして、それは英語でどうでもいいんですが、そのうちの一つが私たちの幹細胞でありまして、その一つの柱だったものを半独立させていただいたのがこの ips細胞研究センターであります。こういった枠組みがあったから、2ヵ月という非常に速い、京大とは思えないようなスピードでこういうセンターをつくっていただきました。
 このセンター、1月22日に発足した、まだ半年くらいしか経っておりませんが、スローガンといたしましては、 ips細胞の成果を未来へということで、 ips細胞研究を推進するわが国の中核研究組織になるというふうに自負しておりますし、 ips細胞に関する基礎研究を強力に加速すると。ただ、基礎研究だけをしているのではなくて、創薬や再生医学といった応用を出口として研究を進めていくということで、研究をしております。
 先程ご紹介しましたように、文科省のほうに新しい1万2000uの5階建ての建物をつくっていただくと。来年度末、平成22年2月に完成予定でありますが、ここが今私たちがおります再生医科学研究所で、隣が附属病院でありますが、その近くに、今、駐車場なんですが、そこを掘り起こしているというのが現状であります。特徴はあとでご説明しますが、オープンラボということを特徴としております。それからcpcというのは、これはヒトに移植する、患者さんに移植するグレードの細胞をつくるための特殊な細胞培養設備であります。
 先程言いましたように、 ips細胞を実際に臨床に使うのにはまだ時間はかかると思うんですけれども、もう最初からそれを目指した施設をつくっておこうと。研究というのはいつブレークスルーが起こるかわかりませんので、今5年、10年かかっていると思っていても突然その日はやってくるかもしれませんので、そのときにあわてないように施設をつくっておきたいと。
 あと、やはり法的ないろんな規制と。厚生労働省を中心とした規制というものもクリアしないとダメですので、それもぜひその日が突然やってきてもあわてないように、今から考えていただきたいというのがもう一つのお願いであります。
 それから、臨床応用する前に絶対必要なサルでありますとか、大型動物の施設もつくりますし、機材の管理というものを非常に大事にしておりまして、それ専用の部屋、人員をつくるというふうに考えています。
 オープンラボ、どういうことかといいますと、横文字で申し訳ないんですが、インターラクティブな研究環境ということでありまして、左に示しておりますのは、これは今の日本の典型的な研究室であります。一国一城の主といいますか、それぞれの研究室が壁で区切られておりまして、教授室がそれぞれの研究室の奥に潜んでおりまして、研究室間の交流がほとんどない。教授が顔を合わせるのは月に1回の教授会だけであると。ディスカッションも何もないというのが、どっちかいうと秘密にやるというのが今の日本の研究環境であります。
 これでは絶対ダメで、右側のように、壁をなくして、教授室が並んでいると。研究者同士の交流は壁なく行えると。いつでもディスカッションが行えると。そういう環境を持ちたいというふうに考えています。実は、15年前、私アメリカでトレーニングを受けていましたが、そのときはアメリカもこの左側のような状況でありました。ところが15年経って、最近またアメリカで研究室を持ちますと、アメリカとかイギリスはすっかり右側に変わっていました。日本は左側のままであります。
 これが日本の典型的な研究所といいますか、私たちの愛する再生医科学研究所でありまして、震度5の地震で潰れるらしいんですけれども、患者さんもいますので、耐震補強もできないという状況であります。
 これが研究室の中でありまして、この写真ではよくわかっていただけないかと思いますが、本当に小さい部屋が幾つもあって、本当に研究室ごとに区切られているというのが現状であります。
 一方、これが私が月にいっぺん行っていますアメリカのグラッドストーン研究所でありまして、非常にきれいな研究所でありますが、見た目よりも大事なのがこの研究室でありまして、これも写真でちょっと伝わるかどうかわかりませんが、広大な研究室になっておりまして、研究ベンチが30くらい並んでいると。複数の研究室がシェアしてるということで、顔を伸ばしたら隣の研究室の人と会話ができるという状況になっています。
 それから、これは教授たちの部屋でありまして、廊下に面してずらっと並んでいるということであります。これ私の部屋でありますが、隣の教授が隣にいるということでありまして、トイレに行くにもほかの教授の前を通っていくわけですから、ほんとに1日に何べんも隣の教授、その階の教授と顔を合わせるということで、私の今の生活パターンは、月のうちの25日は日本で、5日がアメリカなんですけれども、その5日で日本の25日よりもより活発なディスカッションができるというのが現状であります。ですから、なんとか日本もこっちに変えていかないとダメだというふうに考えております。
 新しい施設を今、設計しておりまして、ただ設計者の人としゃべっていると、いや、日本の先生もそういう先生おられるんですが、いざ設計してみると、最後は結局、壁ができて区切られてしまうんですという話ですが、これは今、新しいセンターのイメージパースになりますが、なんとかそういう従来とは違う形にしたいと思って、設計者の方も頑張ってもらって、この真ん中がオープンラボでありますが、5階と4階はメインのラボでありますが、そこは吹き抜けで真ん中がつながっている、上下もつながってるという施設になんとかできそうな状況であります。
 これがセンターの組織図でありまして、複数の研究者と、従来の事務に加えまして、このセンターでは研究戦略本部というのをつくりました。ここは何をするかといいますと、知的財産、広報、それから企業との連携という人材を、これは製薬会社の現役の人を、給料は今より下がるんですけれども、個人的なつてとか、泣き落としとかいろんな手を使いましてリクルートをお願いして来てもらっているという、ここがほんとに今、大事だと考えています。従来の経理とか人事とかそういうところは、従来の大学の事務の枠組みでも十分していただけるんですけれども、知財とか広報というのは、やはりこれから大事になっていくというふうに考えています。
 先程言いましたが、特許というのは、基本特許、 ips細胞をつくるという特許以外に、ここに―― 一つ一つは述べませんが―― 多くの特許がない限り一つの技術が完成しません。ですから、私たちも今、一生懸命研究をして、一生懸命特許を出しております。製薬会社の知財部の人に無理やり来てもらって、特許を頑張って出しておりますが、特許というのは、やはり非常におカネがかかると。一つ出願しますと、そのあと20年間ぐらい維持することを考えると、最低でも3000万はかかってしまうということで、10個出すと3億、100個出すと30億ということで、私たちは100個くらい出す勢いで今頑張ってやっているんですけれども、これおカネありません。本当にありません。私たちが頑張って取ってくる競争的資金というところでは特許というのではほとんどカバーできませんので、なんとかこのへんの支援を、今かなりすでにしてはいただいてるんですけれども、特許が増えれば増えるほど膨大になっていくというのが現状であります。
 それから、特許のことは先程言いましたように、公開されない限りうかがう余地もないんですが、論文は公開されますのでわかります。ちょっと図が小さくてわかりませんが、2006年は私たちが、最初の論文を日本が1個だけ発表いたしまして、アメリカは0だったわけでありますが、2007年はすでにアメリカのほうがちょっと多くなってしまいまして、2008年はまだ半分しか経っておりませんが、残念ながらアメリカに完全にやられています。私たちの努力不足なんですが、ただ日本の論文というのは私たちだけでありまして、アメリカというのはすでに複数のところが出してきておりますので、特許のことはわかりませんが、論文を上回る特許を出しているはずですので、特許も頑張らないと。これはすべての論文の合計でありますが、すでにアメリカのほうが多くなっているというのが現状であります。
 ただ、やはりこういう技術は日本人のためのだけのものでは当然ありません。世界中の人に使える技術でありますので、これは絶対、国際協調が必要なところでありますから、こうやって、中国とかフランスとかドイツを含めて世界中で研究が進んでいくのは非常にいいことだと思っています。ただ、昔あったゲノム研究のように、終わってみると日本の貢献が数%もないと。記者会見は(ビル・)クリントン大統領と(トニー・)ブレア首相だけで、日本の首相はそこに呼んでもらえなかったということは、これは ipsであっては非常にぼくも悔しいですから、絶対この技術が日の目を見たときは国際協調で、その記者会議にはそのときの首相が、この中におられる方なのか、世耕先生なのかわかりませんけれども、ぜひ日本の首相も呼んでいただきたいというのが本当の願いでありまして、そのためには貢献を続けていく必要があるというのをひしひしと感じております。
 海外の動向の2番目といたしましては、これは米国の超有力ベンチャー・キャピタルというのがございまして、そこが ips細胞に特化したベンチャーをすでに設立しております。izumiという日本を意識した名前なんですけれども、izumiバイオというのがすでにできておりまして、世界中の特許をもう集めにかかっています。当然、京大にも関心を持っておりまして、なかなか大学では対応できない。金銭的にも人材的にも対応できないということで、京大の対応といたしましては、この3社、三井住友銀行と大和証券と、それからエヌ・アイ・エフsmbcベンチャーズという関連する3社から12億円という資金提供を受けることができまして、京都大学は社員を出すと。これらの会社はカネを出すが口は出さないという約束で、ipsホールディングスという中間法人をまずつくりました。そして、その100%のガバナンスの下に、6月に ipsアカデミアジャパンという知財管理会社をつくることができました。この会社の陣容がここにありまして、私は関与しておりませんが、代表取締役社長は京大の名誉教授で、奈良県立医大の前の学長、3月まで学長をされていた吉田(修)先生が社長をされておりまして、今、いろいろな日本のトップクラスのライセンス担当の方に社内、もしくは社外の取締役としてご参画いただいております。こういった会社で今後、外国のizumi等の企業等のライセンス交渉にあたっていくというのが今の対応であります。
 最後にお願いで申し訳ないんですけれども、来年度末、22年2月に新棟1万2000平米が、遺跡が出ない限り完成するはずでありますが、これは運営費というのはなかなか計算できないんですが、先程のグラッドストーン・インスティテュートが面積3万平米くらいございまして、そこで年間60億円くらい遣っておりますので、単純計算しますと、このcira、私たちの施設では20億くらいは絶対必要なのでありますが、ほとんどそれが確保されていないという現状でありまして、本当に研究に頭を悩ます以上に資金繰りに頭を使わないとダメという状況でありまして、ぜひ何らかの形でご支援いただきたい。これは京大の中にできるわけでありますが、決して京大だけのセンターではありません。本当に日本のセンターであると考えておりますので、ご支援いただきたいというのがお願いの一つ目であります。
 それから、二つ目は知財活動に対する引き続きのご支援をいただきたいというのがお願いでありまして、3番目は、やはりこの研究というのは、特に再生医学のほうは10年、20年かかるかもしれないわけですから、20年後に活躍する研究者を今から育てるというのが非常に大事であります。そのためには、やはり今―― 15年前には日米の研究環境というのはそんなに違い、そんなに強くは感じなかったんですが、この15年経って、今は正直言うと雲泥の差になってしまったというのが、アメリカ人は抜群のところで研究していて、でも6時になったらみんな帰ってしまう。日本人は、うちの研究室なんかも、言ったら劣悪なところで12時、朝まで頑張っているという状況でありますので、ぜひ日本の財産の一つである知的財産をつくっていくためにも、そういったところの支援をお願いしたいと。
 それから、研究者だけではなくて、研究を支援する人材、知財であるとか広報担当者といった人材の育成にもぜひお願いしたい。それから、ここに書いておりませんが、新しい治療を行う研究者、医師に対する何らかの免責といいますか、もちろん無責任なことはしてはダメなんですけれども、第一歩をだれも踏み出せなくなってしまいますので、ぜひそのへんの政策もお願いしたいと。またそういう、速やかに臨床研究に移行できるような指針といいますか、そういったものの策定をお願いしたいと考えます。
 最後、お願いで終わって本当に恐縮なんですけれども、以上で私の講演を終わります。どうも本当に今日はありがとうございました(拍手)。

司会・世耕弘成議員
 山中先生、ありがとうございました。長時間の講演をいただいたわけでございますが、いろいろ政治的な課題、問題点というのも明らかになってきたのではないかと思います。
 それでは、少しお時間をいただきまして、先生方から山中教授に対する質疑をお願いいたしたいと思いますが、どなたかいらっしゃいますでしょうか。はい、柴山先生。

柴山昌彦議員
 山中先生、今日はたいへん貴重なご講演ありがとうございました。非常に初歩的な質問だと思うんですけれども、ちょっと解せないことがありますので、ぜひ教えていただきたいんですけれども、本人から細胞を採ってそれを増殖するということであれば、拒絶反応はたしかになくなるんですが、本人というのは病気なわけですから、本人の細胞を増殖させるということが、本当に健康な体をつくることにどれだけ役に立つのかというのが、まず非常に率直な疑問としてあります。
 先ほど先生が、この技術を二つの方向で利用されるということで、2番目にその本人の病気を解析して、例えば薬の副作用とかそういうことを分析するのに使うとおっしゃった。これは非常に腑に落ちるんですね。だけれども、最初の、再生医療というところに鑑みれば、他人の健康な細胞を使えば元気になるというのはわかるんです。だけれども、本人の不健康な細胞を使って、拒絶反応はないかもしれないけれども、安全性とかどこまでが確保できるのか、どの程度、健康体ということに貢献できるのかということについて、ちょっと根本的な質問で申し訳ないんですが、そのあたりについて見通しを、それこそが再生医学の時間の長さとか困難性ということにつながるのかもしれませんが、ぜひ教えていただきたいと思っております。
 あともう1点は、本当に先生のパイオニアとしてのお力は素晴らしいものがあるなと思ったんですが、アメリカ等々諸国との間で研究合戦みたいなことが、しかも多様な特許にわたって繰り広げられた場合に、やはり先鞭としての評価ということがどの程度まで国際的な中で確立できるのかということが、われわれ日本の者としては非常に、やはりさっきのゲノムと同じような轍を踏んではいけないということで心配します。やっぱり後進国というか、ほかの国とのこれからの開発の競争の差に勝てなければ、例えば山中先生とか日本の評価が、非常に困難な苦境に陥るというのがこの世界の常なのかどうか、その2点についてぜひ教えてください。

山中伸弥教授
 今、2点のご質問は、二つとも本当に大事な質問で、実は1番目の質問に関しましては、今ちょっとスライドに示しておりましたが、今日、このスライドをお見せしなかったのは、今日の聴衆の皆さまは政治家であられて、学者ではないので、そこまで専門的な質問が出ないかなと、専門的な話はする必要はないかなと思って出さなかったんですが、ちょっと違う講演のスライドからここにお示ししますが、今言われたとおりです。
 実際、例えば特に遺伝疾患の方で、遺伝子に異常があって病気の起こっている方のご本人の細胞を採ってきて移植したら同じ病気になってしまいます。それには二つ対策がありまして、一つは、遺伝子治療といいますか、 ips細胞のレベルで遺伝子の異常を治してしまうと。治してから戻すということも考えられますが、それは技術的にまだ非常に難しい。それよりも、より現実的なのは、ここに示してあるセミオーダーメイド再生医学と私たちは呼んでいるんですけれども、患者さん一人一人からつくるのではなくて、あらかじめ血液バンクのように、ボランティアの健康な方から皮膚細胞をいただいておいて、そこから ips細胞をつくっておこうと。そして神経とか心臓といった移植に必要な細胞もつくっておこうと。そういうバンクをつくれないかというふうに考えています。
 じゃ、拒絶反応はどうなのかということですが、細胞には血液型に相当する型がございます。血液型はa型、b型、o型、ab型ですが、細胞はhla型というのがあります。これは血液の4種類よりももっと多いんですけれども、ただこのhlaが一致すれば拒絶反応は起こらないということが知られています。hlaというのはものすごい型がありますので、100%一致するというのは、一卵性双生児でもない限りあり得ないんですが、それか自分自身の ipsでしかあり得ないんですが、100%一致しなくてもそうとう、かなり近かったら拒絶反応は非常に弱い。非常にマイルドな免疫抑制剤を使うだけで制御できるということがわかっていますので、あらかじめいろんなタイプのhla細胞の型を集めておけばご本人の細胞でなくても使える。しかも、これは健常な人の細胞ですから、そういう遺伝子異常もない。これが今いちばん現実的な治療、将来の姿じゃないかというふうに考えています。
 ではどれくらいの種類を集めないとダメかということですが、これは、実はそれほど多くなくて、日本人というのはアメリカに比べてわりと人種というか、バックグラウンドのばらつきが少ない民族ということもありますので、50種類集めるだけで日本人の8割がカバーできるというふうに試算があります。ですから、非常に大きなバンクじゃなくてもいいわけです。血液バンクというのは血液増えませんから、毎回、採血しないとダメですけれども、このバンクは ips細胞は無限に増やすことができますので、毎回いろいろな人から皮膚の細胞をもらわなくても、いったんつくってしまえばそれでいいという。このバンクが私たちの期待しているところであります。
 2番目のご質問でありますが、それも言われるとおりであります。残念ながら、日本の研究というのは、アメリカ人からよくサンキュー研究というふうに言われています。なんでサンキューかというと、ほとんどの研究はアメリカ人が最初何かワッと開発した研究を、日本人がいちはやく、言葉は悪いですけど、真似するといいますか、日本人は改良をするのが非常に得意な民族です。ですから、アメリカ人が最初にやった研究を日本人が改良すると。もしくは日本人が最初に患者さんに使うと。日本で最初に患者さんに使うということはあり得ないのですが、日本でどんどん研究は進んでいくと。だから、論文は日本ですごく出て、日本で研究が進んでいくように見えるんですが、アメリカ人の最初にそれを開発した人から見ると、それは「ありがとう、サンキュー」なんです。なんでかというと、自分の開発した技術を単に花を咲かせてくれてるだけで、アメリカ人がまいた種に日本人が一生懸命になって水をかけてくれるということになってしまうので、サンキュー実験と呼ばれているんですが、この ipsに関しては、これはぼく自身も本当にそれは稀な出来事ですが、ぼくたちがある意味サンキュー実験になっています。競争は激しいんですけれども、アメリカが今やっていることは完璧にぼくたちのまいた種に水をやってくれていることですので、ある意味サンキュー実験です。これは本当にぼく自身の研究者生活を振り返ってもなかったことですから、彼らは4つの因子のことを山中ファクターと呼んでくれてるんです。もしくは京都ファクターと呼んでくれていますから。
 ただ、論文だけ考えているとそれでいいんですが、知財ということを考えるとサンキューではダメで、論文というのはサンキューでしたが、知財は彼らがどんどん取っていきますから、サンキューとは言っておりません。ですから、論文だけだとサンキューですが、知財を考えると、日本がやはり同じくらい出していかないと、この方法で患者さんに使うのに、アメリカにすごい特許料を払わないとダメということになってしまうのは間違いないと思います。

柴山昌彦議員
ありがとうございました。

司会・世耕弘成議員
 ありがとうございました。
 では、小野先生どうぞ。

小野晋也議員
 これは山中先生にお尋ねするのは、ちょっと無理なご質問かもしれません。政治家ないし神学者等が答えなきゃいけないことかもしれませんが、先生のお考えをお聞きしたいと思うのは、一つ目は、命って、この遺伝子レベルになるとどういうふうに定義されるのかということですね。二つ目には、重病者の延命を再生治療で行えるということでありますが、それは本当に人々を幸せにするものになるのだろうかどうかということですね。それから三つ目には、文部科学省は生きる力というけれども、生きる力というのは、こういう解明を進める中でどういうふうな力であるというふうに先生はお考えになられるのかということです。こういうちょっとお答えにくいことばっかりお尋ねして申し訳ないんですが、参考までに聞かせていただきたいと思います。

山中伸弥教授
 一つ目の命は何かというご質問は、本当に大変なご質問なんですが、ただ私、命の定義というのはできません。私わかりません。ですから、いちばん端的なのは、受精したあといつ生命と呼べるかという永遠のテーマがあります。キリスト教の方は、受精した瞬間が生命の始まりだと。ブッシュ大統領もそう考えておられるので、その受精卵から細胞をつくるというのは殺人と同じようなことだとおっしゃっているわけです。でも、日本とか多くの人は、生命の始まりは脳ができるとき。なぜかというと、今、生命の終わりは脳死だと。脳が機能を停止するときと定義されてきているので、では生命の始まりはやはり脳ができるときと考えようということで、es細胞をつくる受精卵の段階では脳は全くできていませんので、まだ生命とは呼べないという。だからその議論は、もうこれは永遠に収まりません。
 ただ、私も元医者ですから、より現実を考えるしかなくて、患者さんを取るか受精卵を取るかという現実的な選択にすぐなってしまうんです。そうなると、私はやっぱり患者さんを百%取ります。高校で授業をときどきするんですが、写真を見せて、車椅子の患者さんと受精卵を保存してある液体チッソタンクを見せて、病院に両方あって、火事になったと。あなたはどっちかしか助けられませんよ。車椅子を持ち出すかタンクを持ち出すか。どっち助けますかと。ぼくは百%患者さんを助けます。でも、これ、高校生はけっこう迷う子が多いんですね。タンクの中には受精卵が何百個と入っているんです。患者さんは1人だとかいって、受精卵のほうが大切じゃないかという。だから、それくらい議論は分かれますが、元というか今も一応医者なんですが、医者を経験した私としては間違いなく患者さんを助けますので、だからそういう考えから言うと、受精卵を使わないと助けられない患者さんがいるんだったら受精卵は喜んで使います。
 ただ同時に、受精卵はものじゃないとも思っていますので、できることなら避けたいということで、今回の研究をやっているというのが……。だから、その定義というのはちょっとわからないんですけれども。
 それと2番目のご質問も非常に大変なご質問で、これは、こういう再生医学とかどんどん進んでいくと、寿命は間違いなく延びていくと思います。それは再生医学よりまずは今のいろんな生活習慣病の研究ですね。動脈硬化の研究だとか高血圧の研究であるとか、そういうのが進めば進むほど寿命は延びていくと思うんです。それは、冷静に考えるとどうなっちゃうのかなと。今もだいぶおかしくなってきていますが、本当の高齢者社会になってしまって、社会として成り立たなくなるんじゃないかというのはすごく感じています。
 しかし、やはりこれも医師及び生命研究者としてはそんなことは考えに入っていない。目の前の人は助けるし、新しい薬はつくるし、病気のメカニズムは解明せざるを得ないというのが状況でありまして、そちらの社会の対策はやはり政治家の先生方にやっぱり考えていただくしかないというのは、役割分担するしか……。私たちのできることは寿命を延ばすことです、ということしかちょっとお答えできないというのが考えです。
 3番目の、生きる力。これもまたすごく難しい。ですが、今回の、私たち自分たちの成果に私たち自身がいちばん驚きました。今日お見せしませんでしたが、81歳の人の皮膚の細胞って、調べたらやっぱり81歳なんですね。ものすごい年取っています。年齢に伴ういろんな変化というのは細胞レベル、遺伝子レベルでも起こります。ところが、たった4つの遺伝子を入れてできた ips細胞というのは、完璧に若返っているんですね。でも、それは本当に驚き以外なにものでもないんですが、同時にやっぱり生命というのはまだすごいポテンシャルがあるなというのを実感しました。だから、ヤモリとか足を切ると足が生えてくるんです、骨も生えてくるんですが、人間は残念ながら生えてこないんですけれども、でもこれは生命の力が……。本当にポテンシャルを感じて、本当にこれ将来的には医学が進むと、ヤモリと同じように人間も切れた足がまた再生するんじゃないかと、それも本当に夢じゃないんじゃないかということを、今回も一つの成果で、そういうこともあり得るんじゃないかなと、人間の生きる力ってすごいなと思ったのは実感ですが、ご質問からはちょっとずれたような気がします。すみません。

司会・世耕弘成議員
 ずいぶん時間も来てます。じゃ、最後、古川先生、ご質問をいただきたいと思います。

古川俊治議員
 先生、どうもありがとうございました。ここにいる、自由民主党みんなそうなんですが、特にこの清和政策研究会はライフサイエンスからの経済成長を目指しておりまして、先生が先程驚かれたという2007年度の追加支援なんかにもいちばんこの中にいる議員の発言が効いたと思いますので、われわれはぜひこの ipsの実現というものを目指して頑張りたいと思っているんです。
 それで、現実にこれを使うという面から、ちょっと専門的に踏み込んだご質問をさせていただくんで、先生に直接伺える機会が少ないんでご容赦いただきたいと思うんです。一つが、私がいろんな勉強をさせていただいたときに、例えばこの ipsの樹立に関しまして、es細胞由来の細胞を使った場合、それから胎児の細胞を使った場合、あるいは新生児を使った場合、先生は成人でも成功されていますけど、実を言うとより若い細胞から樹立したほうが簡単なのではないか、そういう傾向があるのではないか。その点について、先生の印象を伺いたい。
 それから、もう一つ、81歳でできたというお話もございまして、喜ばしいことだと思うんですが、調べてみると ipsを同じように樹立しても、なかにコロニーによって若干のヘテロジェネイティーがあると。これが年をとった場合に、中での多様性というか ipsのばらつきが大きくなる傾向というのはないのかどうか。これは先生に前にお聞きしたときに、臍帯血を集めておくほうがより望ましいと。恐らく加齢性の変化によってゲノムの低メチル化ですとか、あるいは部分的な高メチル化が起こってくるはずですから、そういうことによって影響しているということは、国の政策として恐らく臍帯血をある程度保存していく。これが将来のもっとスペシフィックな ipsをつくっていくためには有用なんじゃないかというような考え方、ちょっと先生のご意見を伺いたいというふうに考えています。
 それからもう1点、私も倫理よりもやはり患者さんが大事だというのは間違いないことだと考えておりまして、そのために先生、先程ちょっとhlaのことをお話しになりましたけども、それで申し上げますと、病気の方には、急性期に ipsを使わなきゃいけない。神経細胞ですとか脊髄損傷、あるいは脳の損傷、それから心筋虚血なんかについては急性期の治療が必要ですので、 ipsの安全性をチェックしてる暇が恐らくないんだろうと。そのためにipsのバンクをつくるということは非常に重要だと思うんですが、その場合も含めて、結局どうしても他人由来ということを乗り越えないとすると、これはもう一つの方法として核移植es細胞があるわけですが、これの将来的な意義というのについて先生はどうお考えになっているのかということについてちょっとご回答を聞きたいと思います。

司会・世耕弘成議員
 なんか学会の質問のようになってしまいましたが(笑)、山中先生、みんなにわかるレベルでお答えください。

山中伸弥教授
 幾つかご質問がありましたが、まず ips細胞が6歳の女の子にやっても81歳の女でやってもできるということをお見せしましたが、効率は実はそんなに変わらないんです。だから、それも非常に驚きで、81歳になってもある能力は残っているというのは、ほんと驚きでした。だから、それはまずクリアされています。あとできてくる ips細胞のブレといいますか、それにつきましては確かにいろんな、ちょっとずつ違う。似てるんですけれども、微妙に違う。神経になりやすいとか、血管になりやすいとか、そういうのは確かにあります。ただそれは逆に、私いい点だと思っておりまして、いったんある患者さんからちょっとだけ皮膚をもらいますと、この技術で言うと、もう何十個も ips細胞ができるんですね。それがちょっとずつ全部違う性質で、あるやつは神経になりやすい、あるやつは血管になりやすい。いろんなバリエーションができますから、だからそういう意味で、いろんな目的ごとに最適なものを選べる余地があるということで、逆にいいんじゃないかというふうに考えています。
 それから、臍帯血バンクはもうすでにある公的バンクですから、それをもし転用できたら臍帯血から ipsができたらいちばん理想的ですので、その研究では私たちも一生懸命やっています。
 最後に、核移植es細胞についてですが、核移植というのは、ドリーという体細胞クローンをつくった技術ですけれども、あのクローン技術は、ぼくは再生医学からは恐らくもうなくなるんじゃないかと考えています。ドリーをつくったイギリスのイアン・ウィルマットさんが、もうクローンはやらないと。 ipsをやるとすぐに明言されましたが、この再生医学に限ってクローン技術はなくなるんじゃないかと。ただ家畜の分野、家畜とか、要するに優秀な家畜を大量生産するとか、動物の体を、薬をつくる工場のように使うといったクローンの方法があるんですが、そちらの技術というのはたぶんクローンでしかできませんので、そちらは今後も残るんじゃないかと思います。

司会・世耕弘成議員
 はい、ありがとうございました。
 それではそろそろ時間もずいぶん経ちましたので、ここで山中教授の講演を締めくくりたいと思います。もう一度、盛大な拍手を山中伸弥教授にお願いいたします。

山中伸弥教授
 ありがとうございました。

司会・世耕弘成議員
 それでは、ここで研修会の1部を締めくくるにあたりまして、杉浦正健政策委員長から一言ご挨拶をちょうだいいたしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

杉浦正健委員長
 山中先生、どうもありがとうございました。地獄のような暑さの中を、初盆だとかミニ集会とかはいずり回って、箱根へまいりまして極楽へ来たような気持ちでおったわけでありますが、山中先生の形容しようのない素晴らしい研究を伺って、これは地獄をはいずり回っているだけではダメだなと感じた次第でございます。
 ご要請がございました3点。いろいろご要請がございました。あの5階建ての震度5で潰れるセンターも建て直せばいいと思いますね。幸い中川代表世話人が国家戦略本部の本部長代行に正式にご就任いただきまして、世耕さんにその事務局長をお願いしようじゃないかという中川代表世話人のご意向でございますので、これは国家戦略の一部でありますから、世耕先生、頑張ってやりましょう。皆さん、清和研、総力を挙げてこの先進的な研究を支援していきたいと思います。いかがでございましょうか(拍手)。
 山中先生、本当にありがとうございました。

司会・世耕弘成議員
 長時間、本当にありがとうございました(拍手)。


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