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政策委員会 第6回


講演 戦後レジームからの脱却
講師 安倍晋三 清和政策研究会相談役

平成22年1月21日
下村博文政策委員長
 ただいまより政策委員会を開催させていただきたいと思います。 今まで5回、政策委員会を開催しておりまして、「保守」というキーワードの中でずっと勉強会をしております。清和研のホームページにも今までの議事録が掲載されておりますので、ぜひprをしていただきながらご覧になっていただきたいと思います。
 今日は安倍元総理・清和研相談役から、「戦後レジームからの脱却」というテーマでお話をしていただいて、その後、質疑応答をさせていただきたいと思います。それではよろしくお願いいたします。

安倍晋三相談役
 皆さん、お疲れさまでございます。昨年、お話をさせていただく予定でございましたが、インフルエンザにかかりまして、急なキャンセルで皆さまには大変ご迷惑をおかけいたしましたことを、まずもって冒頭でお詫びを申し上げたいと思います。
 「戦後レジームからの脱却」は、いわば戦後の体制、今の体制自体が、日本が占領されている時代につくられたものであるという問題意識のもとに、それにとらわれていたのでは21世紀にふさわしい、平成の御世にふさわしい、そして今、グローバルな時代の中において、誇りある日本をつくっていくことはできない。そしてまた、本来、日本が持っていた素晴らしさを再認識する上において、戦後レジーム、まさに戦前との断絶を図ったという意図も当時の進駐軍にはあったわけでありますから、そこでも障害になっているという問題意識であります。
 そもそもこういう問題意識を強く、常に意識するようになったのは、私が当選1回の後半です。当時、米国の政権はクリントン政権でありまして、北朝鮮との間に、北朝鮮側に核の開発をあきらめさせて、その代わり軽水炉を2基つくってあげますよという、kedo合意を進めていたわけでありますが、その中で日本側にも融和的な対応をしてもらいたいという認識が米国側にあったわけでございます。そこで日本は、拉致問題がある中において、コメ支援をするかどうかということが大議論になっていました。私は当時、外交部会等でそれに対して強く反対をしていたんです。
 そのときに、米国に北朝鮮問題担当の大使がいまして、日本にやってまいりまして、反対をしている若い議員を公使公邸に呼んで、昼食をしながら、米国の方針に賛成してくれという、場を設けたんです。私もそこに招待されました。「米国としては北朝鮮に政策を変えさせようとしている。日本もその中で協力をしてもらいたい。ついては、日本がコメの支援をすることはそれにプラスになるんだから、どうか反対をしないでもらいたい」、そんな話でありました。
 そこで私はこう申し上げたんです。「日本では横田めぐみさんという13歳の少女も拉致をされている。アメリカで、例えばアーカンソーで、クリントン大統領の地元で13歳の少女が拉致をされたとしたら、アメリカは同じようにコメの支援をするんですか」と申し上げました。そうしたら、今でも忘れないんですが、彼女はちょっと考えた後に、ニヤッと笑って、「もしそんなことが起こったら、今ごろ米軍の海兵隊が平壌を占領してますよ」と言ったわけです。
 その後の言葉が私にとってはきわめて強く印象に残ったんですが、「日本にそれができるんですか? 日本は日本のやるべきことをやってください。それはコメを援助することです」ということでありました。いってみれば、日本にはできないんでしょ、だったら援助するしかないでしょと、これが米国側の私の問に対する答えだったわけであります。米国というのは時には傲慢な態度を取ります。きわめて不愉快でありました。もちろんその後、私も反論はしたんですが、ただ、現実は確かに日本はできないわけです。
 どうしてそういうことになっているかということであります。何も私は朝鮮半島に自衛隊を上陸させようと言っているわけではないです。つまり、そういう選択肢をわれわれが頭から捨て去ってしまっている現状というのは、この戦後のレジームに起因すると。これは精神にも及んでいるわけであって、法的な側面、憲法との関係で考える以前に、われわれはそうした精神を失っているということではないかと考えたわけであります。
 そこで戦後のこの仕組みにおいて、憲法もそうですし、教育基本法もそうです、出来上がったものをもう一度見直していく。見直をして、新しく私たちの手で書いていくことによって、真の独立を回復をし、新しい時代を切り拓いていくという精神を取り戻していけるのではないかと考えたわけであります。
 憲法についてはいろいろな議論がございますが、やはり前文に大きな問題もあると私は考えているんです。
 外交において、戦後レジームからの脱却という中においての外交政策として、「主張する外交」を掲げたわけであります。主張する外交とは何かということなんですが、まず日本外交は、ある意味では国際社会でそれなりに評判もいいんです。なぜいいかという観点、これは見方において評判がいいと私は申し上げているんですが、大変優等生の外交と言ってもいいんですね。日本は決して、世界はこうあるべきだということを強く主張し、国際社会をリードしようとはしないわけです。しかし、国際社会がそれを決めた中において、こういうことをしましょうと言えば、日本はきちっとそれを守る。請求書を送れば、その請求書に対してちゃんとおカネを振り込んでいくというのが日本の姿勢であったと思います。
 典型的な例で言えば、国連における活動であります。日本は一応、国連改革、国連の安保理常任理事国入りということについて、日本の意志を示してきたことはありましたが、それを運動として強く展開をしたのは小泉政権になってからです。なかなかうまくいきませんでした。
 これが典型例であって、日本はかつては18%近く、国連の分担金を負担をしていました。日本はアメリカに次いで第2位なんですが、国連のすべてのことを仕切っている、いわば最終的な決定権は常任理事国にあるわけでありまして、常任理事国5ヵ国のうち一つの国でも反対すれば、ほかの百何十ヵ国が賛成しようが物事が通らない。つまり、国連の王様は常任理事国であります。その中で日本は、常任理事国でないにもかかわらず、第2番目の分担金を払っていた。安保理のp5、5ヵ国のうち、米国を除いた4ヵ国、中国、ロシア、イギリス、フランスを足し込んだ負担金よりも日本の負担金のほうが多いにもかかわらず、常任理事国の椅子にはない。唯々諾々と日本は負担金を払ってきたということなんです。
 また、pkoにおいてもそうです。pkoにおいて、日本の分担金は相当の大きな額であります。ただ、pkoについて、ここでpkoをやるべきだと日本が議論をリードしたことがあるでしょうか。1回もないんです。やはりおかしいですね。なぜそういうことになっているかといえば、日本人は内向きだとか、あるいは江戸時代に長い間、鎖国をやっていた余韻ではないかという人がいるんですが、これは明らかに憲法の前文に由来をしているんだろうと私は思います。
 「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とまず書いてあります。普通の国であれば「断固としてわが国の領土と国民の安全を守る」と、決意が書かれているものでありますが、それは諸外国にお任せをすると、かなり思い切った宣言がなされている。
 しかし、その後にこう続いているんです。「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭をこの地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」と書いてあるわけでありまして、これは日本が、専制と隷従、圧迫と偏狭はけしからん、これをなくしていくんだということを宣言をしているのではないですね。そう考えているのは国際社会であって、国際社会がそう考えているんだから、この国際社会において名誉ある地位を占めたい、つまり国際社会にほめてもらおうではないかと書いてあるわけであって、誠にいじましい宣言であります。
 そこには日本の主張はないわけであって、敗戦国の詫び証文ではないかと私は言って怒られましたが、これに則って外務省は外交を展開をしている。つまり、世界はどうあるべきなどということは言わない。そもそも平和を愛する諸国民に任せると書いてあるではないですか。それをやっていったのが日本の外交であったのだろうなと思います。
 典型的な実例としては、小泉政権の末期、2006年、北朝鮮がミサイルを発射したとき、それを非難する国連決議をしようというときに、当時、私、官房長官でした。国連決議をするにおいて、たまたま日本は非常任理事国で、安保理の議長国でありました。この地位を利用して、北朝鮮を非難する明示的な文章を入れた決議をしようとしたんですが、しかし中国は、それに対して最初から反対を表明していた。そうなると、日本の外交というのは、中国が反対をして、拒否権を発動されるから、出すのをやめておこうということになるんです。
 当然、中国が拒否権を発動するという雰囲気の中においては、欧米の国々は腰が引けるんです。なぜかといえば、ミサイルの問題については、ミサイルの射程に入っているのは事実上、日本であって、日本を狙っているわけです。ヨーロッパは遠い世界で、やはり残念ながら他人事なんです。であるならば、中国と事を構えたくない。イランの決議が控えていますから、米国も中国との関係において慎重な配慮が必要だと考えるし、ヨーロッパはイランの問題のほうが大切ですから、ここで中国の機嫌を損ねたくないという考えがあったんだろうと思います。
 しかし、そこで日本が、欧米が積極的ではない、ましてや中国が拒否権を発動するのであれば、やめようとすぐ考える思考回路が問題なんだろうと思うんです。そこで、では国益は何かということを考えないわけです。国際社会において孤立するのではないかということを非常に恐れるわけです。もちろん孤立は避けなければなりません。しかし、ときには孤立を恐れずに主張しなければならないときがありますし、その主張をして初めて事態が変化する場合もあるんだろうと思います。日本こそが脅威を受けている中において、日本が発言しなければ、残念ながら国際社会において、日本に先んじて発言してくれる国はないわけであります。
 中国に拒否権を発動されても構わない、そのときの勝者は実は中国ではないんだと。オリンピックを中国は控えていましたから、北朝鮮と同じように中国は思われる中において、中国は拒否権を発動する、これは中国にとっての敗北ではないか。だからわれわれは、あくまでも中国に拒否権を発動されることを覚悟した上において、これを追及しようという決定を下しました。外務省側からはずいぶん異論が出ましたが、その方向になったわけであります。
 しかし、結果はどうだったか。最終的にはこちらの外交努力によって、中国も含めて、すべての国が賛成をして、北朝鮮に対する非難の決議が了承されたということになるわけであります。
 これも主張する外交ですが、声高に国益を主張することが主張する外交するということではありません。冒頭申し上げましたように、日本もアジアのあるべき姿、世界が追求すべき理想について堂々とその考えを述べるべきではないか。その中で責任を果たしていくことが、私が申し上げている主張する外交であります。角度を変えて言えば、例えば地球温暖化の問題において、「クールアース50」という提案を日本からいたしました。つまり、日本が積極的に責任を果たしていくという覚悟をもって、示していくことこそが、主張する外交ではないだろうかと思うわけであります。
 それと、米国と対等な関係は、鳩山さんに言われるまでもなく、われわれが追求してきたことだろうと思います。現在の安保条約は、今月(1月)の19日がちょうど安保50周年だったわけでありますが、1951年、52年、交渉して出来上がった、旧安保条約を改正したものであります。
 旧安保条約は、実は1条から5条までしかないんです。そこで書かれていることは何か。1条にこう書いてあるわけです。つまり、米軍は日本に軍隊を置くことができる。その軍隊を使って、日本国内における騒擾や、外敵による侵略に対して対応することもできると書いてあるわけであって、日本に対する防衛義務というのはまったく書かれてないんです。事実上、軍隊が駐留するという、占領後、駐留した軍隊をそのまま認めていくというものにすぎないわけであって、何とかこの状態を打開をしようとしたのが50年前の新安保の改定であって、5条から10条に増えていくわけですが、そのときに5条に日本防衛義務が書かれました。
 日本防衛義務は書かれているけれども、日本は米国に対しては防衛義務を持っていませんから、5条で防衛義務が課されている、これに対する日本の義務として6条に極東の平和と安全のために日本の基地を米軍は使うことができるということが書いてあるわけです。ここで初めて、かろうじて双務性を担保し、対等に近づいたということだろうと思います。
 鳩山さんは、対等と言ったからには、米軍は……安保条約の基本は5条ですから、5条というのは米軍の若い兵士が日本のために命を懸けるということです。しかし、米軍の兵士には恋人もいれば、子どもや親もいるかもしれない。そういう愛する人たちがその行為は納得できるなということでなければ、実態として民主主義国家はいま言ったことを実行することができないわけであって、だからこそ信頼関係が必要なんだろうと私は思うんですが、その逆がないわけです。対等にするのだったら逆をやってくれというのが当然、普通の人の頭の回路なんだろうと思うんですが、それをなしに対等というのはどうかとなる。
 だからこそ、集団的自衛権の行使については、別にアメリカに奉仕しようということではまったくないんです。まったくなくて、むしろアメリカと完全に対等な関係になる。実際、集団的自衛権の行使なんていうことは、米国は日本に本格的に助けてくれなんていうことは、最強の軍隊を持っているんですから、事実上なかなか起こらないわけです。
 nato条約において、集団的自衛権の行使が書かれていますが、nato条約における集団的自衛権の行使を行ったのは、natoができて50年たって、あのアフガンの攻撃、ただ1回きりですからね。1回きりで、そんなことはめったに起こらないんですが、しかし、それを書くことによって初めて、日本は完全に対等になっていく。ならば、例えば米軍再編においても、もっともっと日本はさまざまなことが主張できますよ。日本はここはできますよ、あれができますよということがいろいろ増えていくわけでありますから、そういう意味において、集団的自衛権の行使ということも、戦後レジームからの脱却において大切なことではないかと思うわけであります。
 その中ではもちろん、今日は義家先生もいらっしゃいますが、教育基本法改正といったことは本当によかったと思っています。旧教育基本法にはなるほどいいことが書いてあるんですが、これはいわば、きわめて地球市民的、普遍的価値がずらずらと並べてあって、日本の文化や伝統の香りがまったくしないものであったわけであって、結果、その中において抜けていた書き込むべきものを、連立政権という条件の中ではありましたが、何とか書き込むことができたなと思っています。
 ただ、もちろんまだまだ道半ばではありますし、民主党政権という左翼政権ができた中において、非常に反動的な状況になっているという中において、われわれに課された使命はきわめて大きいのではないかと、このように思います。
 いま戦後レジームからの脱却で目指したものについて、ざっとお話をいたしました。しかし、今、民主党政権が出来上がって、むしろ一層、問題点は浮かび上がってくるのだろうなと思うんです。そこで自民党は、原則に立ち返るべきだろうと思います。
 自由民主党が昭和30年に、日本民主党と自由党が合体してできたわけでありますが、目的は二つあったと私は思っています。
 一つは、憲法を改正して真の独立を回復をするというのが1番目の目的だったんだろうと思います。当時の議員というのは、実際、占領時代の日本の状況を目撃してきた中にあって、忸怩たる思いをしてきた議員がほとんどであったわけであります。そのためには、保守が合同しなければ実現できない。
 2番目の目標は、まだまだ日本は貧しかったですから、豊かな日本をつくる。豊かな日本をつくるためには、安定的な経済政策、強力な経済政策を推し進めていく必要があって、そのためには政局を安定させなければいけないということだったんだろうと思います。
 しかし、政治の現場というのは、目前の選挙に勝たなければいけませんから、2番目の目標を優先して50年がたってしまった。1番目の目標は後回しにされてきたということではないか。そこにある種の問題点が出てきたと。
 経済優先主義というのは、損得ですから、損得優先に……私は決してきれい事を言うつもりはありません。2番目の目標だって大切なんですが、しかし、それを優先するあまり、価値の基準を損得に置いてきた結果、1番目の目標とはかえって乖離ができてきたというのが、現在の自由民主党の姿ではないかなと思うわけでございます。だからこそ、わが党が政権をまた奪還する上において、何のために政権を奪還するんだという理念と目標をしっかりと定めなければいけないと、このように思います。
 予定された時間も経過をいたしましたので、とりあえずここで話を閉じさせていただきまして、また皆さまからご意見等をお伺いをしたいと思いますので、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。


質疑応答
高市早苗政策委員長代理
 安倍先生、どうもありがとうございました。下村委員長が予算委員会に出席されましたので、代理として進行させていただきます。
 それでは、いまのお話を伺った上で、先生方からご意見、ご質問ございませんか。
稲田朋美政策副委員長
 ちょっと遅れてきましたが、安倍先生の本も読んでおりますし、戦後レジームからの脱却に最も期待をした一人であります。
 それで、今の自民党の課題というか、そこがどこにあるか、そして私、安倍先生が総理でいらっしゃった時におっしゃっていた、「美しい国」というスローガン、すごくよくて。今、ほんとに美しくない。美意識だとか潔さだとか、そういったものが政治からまったく失われているというところで、もう一回、美しい国ということをぜひ自民党からも発信をしたいと思うんです。
 ややもすれば民主党がやっている利益誘導政治とか、小沢(一郎)さんの問題というのは、古い古い自民党がやっていたことを推し進めて、強調していることだとも言えると思うんです。今、民主党の支持率が下がっているにもかかわらず、自民党の支持率が上がっていないのは、自民党が生まれ変われてないという国民の声があるのではないかと思うんですが、安倍先生の自民党再生に必要なものというものをちょっと聞かせていただけたらと思います。
安倍相談役
 自民党も国民政党ですから、いろいろな人の要望にこたえていかなければいけないというのは事実なんだろうと思うんです。自民党は約50年ちょっと政権を担ってきたんですが、その中で、多くの期間を高度成長の中での政権与党だったんです。高度経済成長ですから、必ず経済が成長して、予算は大きくなります。ですから、次の新年度予算は前年度よりも必ず大きな予算になるんです。そうすると、新たに増えた予算をリュックサックに入れて地元に帰って、これをこうしたこうしたと演説をすれば、選挙に有利であったわけです。ですから、かつては予算編成した後の選挙というのがけっこうあったんです。
 ところが、高度経済成長ができなくなって以降、それが難しくなったということなんですが、しかし、そういう選挙の方法によって、さまざまな団体をつくって、応援団をつくった。これはまさに権力を持っていることによっての、いわば権力の分け前を配分するという機能で巧みな政党であったがゆえに、ここまで来たんだろうなと思うんですが、同じことを小沢さんはやろうとしているということだろうと思うんです。
 政権を失った今、われわれは、同じことをやろうと思ってもできない。そういう中において、それが目的であった団体が去っていくのはある意味ではやむを得ない。しかし、それをむしろチャンスとして、先程申し上げましたような、われわれ、目指すべき方向がちゃんとあったんですから、この理念をもう一度高く掲げて、理念の力、その磁力によって人を集めていくしか方法はないんだろうと私は思うんです。
 われわれが目指しているものは正しいんですから、決して自信をそんなに失う必要はないんだろうと思うんです。総裁も執行部も、そのことにもっと自信を持って語らないといけないと思うんですね。便宜的に、自民党が今は保守政党としての姿を明確にしたほうがいいから、戦略的に語っていると、それは見透かされるんです。あくまでも強い信念でそれを語っていくことではないかなと思います。
 サッチャー保守党が政権を奪回するときに、保守党が非常に労働党化していたわけです。給付合戦の中に保守党も巻き込まれていったわけでありますが、サッチャーはそことは明確に決別をしたんだろうと思うんです。あのときにサッチャーというのは決して保守党の主流ではなかったんですが、自分の考え方こそが保守党だ、それ以外の人々は堕落しているという考え方で、結局、見事に保守党をカムバックさせたんだろうなと思いますので、われわれもそのことに学ばなければいけないのではないかと思います。
高市政策委員長代理
 進行者が口をはさんでは申し訳ないのですが、とても良いご示唆だったと思います。特に今のように予算権限がない時期こそ、私たちは勤勉と自立の倫理を取り戻せる、美しい国を創っていくチャンスなんだなと、私も嬉しい思いで伺っておりました。
 ほかにご質問、ご意見ございませんか。
吉野正芳政策副委員長
 ちょっと角度は違うと思うんですが、昔は日本の美しいものとして絆社会、共同体意識が強いという形があるんですけれども、田植えをするにしても、みんなでやらなければ飯が食えなかった。だから、自然にみんなでやるようになっていた。ところが今は、一人でも飯が食える時代になってきています。
 そういう中で、例えば年金なんていうのは、基礎年金は個人勘定なんです。でも、あとは世帯勘定です。夫婦間の、いわゆる報酬比例部分は世帯勘定、医療も世帯勘定なんです。
 これからの流れとして、個人勘定でいくのか、それともやはり日本人の持っている絆というものを大切にする意味でも世帯勘定というものを死守、守っていかねばならないものなのか、私、ちょっと迷っているんですが、安倍先生の考え方をお聞きしたいと思います。
安倍相談役
 年金については、離婚した後も女性はしっかりと自分の積み立て分は持っていけるという形でなければいけないんですが、しかし他方、世帯という考え方を取りやめる、厚生省にも財務省にも古くからあった考え方ですけれども、これは誤りだと私は思います。
 その中で配偶者控除をやめようというのが民主党の提案です。配偶者控除、扶養控除等々をやめて子ども手当を支給するというのは明らかに家族から個人へ変えていっていると言ってもいいと私は思います。
 その意味において、個人の権利を尊重するということと同時に、家族の仕組みについては社会的に制度としてしっかりと組み込んでいくことが大切だろうなと思います。もちろん柔軟性は必要ですけれども。だから、配偶者控除はもう一度よく考えなければいけないんですが、配偶者控除をなくしたらこういう損得があるよというアプローチをすると、損得合戦になって民主党に負けますよ。1人2万6000円出すという力に。
 自民党の出したパンフレットも、「あなたの世帯はこれだけ損をする」という、そういう情報を与えるのは必要です。でも、根本問題は何かというと、配偶者控除というのは、男女が出会って結婚して夫婦になって、家族をつくっていくという価値に着目して、税制上その価値を認めたわけです。それをなくしてしまって、ばらばらにして、子ども手当、2万6000円。しかも、これは額として多すぎますから、多すぎる額を出すということは、お小遣いとして中学生に1万円やったら、お父さんが一生懸命頑張った上でのお小遣ではなくなって、1万円出したって、ほんとは2万6000円なんじゃないのと思うことすらある。
 つまり、子育ての社会化につながっていくという大きな危険性があって、もともと子ども手当をドーンと出すというのは、共産党の中の政策の一つの大きな項目だったわけです。そこのところも、われわれ、そういう理念から衝いていく必要があるのかなと思います。私はもっぱら地元の演説会では、この子ども手当も家族をばらばらにする制度なんだと。配偶者控除をなくすということについても、という話をしていました。
 民主党がやっていることはまさにそうじゃないですか。配偶者控除もなくします。それで子ども手当が行く。結婚しているというメリットはまったくなくなって、むしろ結婚しなくてパートナーでいたほうが、もし配偶者が収入がなければ得じゃないですか。パートナーが生活保護であるとすると。という制度になるのだろうと私は思います。
 スウェーデンがそうですよね。ですから、非嫡出子のほうが比率としては大変高くて、一方、子どもの犯罪率は非常に高いですから、どうしても不安定になるんです。
義家弘介政策副委員長
 安倍先生、ありがとうございました。安倍先生のリーダーシップに心から期待している一人として、今日は参加しながら、さまざまなことを考えながら勉強させていただきました。
 その上で、今、自民党がなすべきことは、小沢問題も鳩山問題も、それに対して野党として追及していくことはもとより、奪還のための代案を出さなければならないことだと。私も文教科学部会を任せていただいていますが、ここでもけっこう諸刃の問題が実は出てきます。例えば今国会で高校無償化法案を彼らは出してくるわけですが、国民感情としてはただになったほうがいい、社会全体で子どもたちを育てていこうというわけですけれども、その代案としてパッと思いつくのはこういうことなんです。
 今の高校無償化は、公立は無償化にして、私立は同程度の援助をすると。これは田舎に行くと、公立受験に失敗した人間が受け皿として私立に行くわけですから、東京とはちょっと違うんです。その上で、ならば高校の11万9800円を、公立高校を維持した上で、およそ12万円で私立高校にも行けるように、要するに同じにしてしまう予算案をつくったらどうか。それで試算すると、奨学金を入れても現在の民主党の高校無償化の規模と同じなんです。
 でも、そういう代案を出すと、公の意識が削れていくかという問題にまたいってしまう。公立高校と私立高校がほぼ同じおカネで行けるようになると、私立は建学の精神という形で、ある意味では公の学習指導要領から離れた部分の教育が保障されているんですが、それを一緒にすると、公教育というもののガバナンスが高校においては完全に効かなくなるのかなという、諸刃の悩みも持ちながら、昨日から数字をいじくっているわけです。この高校無償化について、安倍先生はどう考えておられるのか。
 教育再生会議でさまざまな法改正をやってきましたが、あれを彼らは全部見直そうとしている。これはまさに日教組の意向であることは間違いないわけですが、先日、山梨に、輿石(東)氏のところに乗り込んで、かなりバトルを展開してまいりました。6年前の輿石氏の選挙で逮捕された財務部長が、今年度の春から学校の教頭先生になっているという事実が明らかになりまして、この事実関係を追及してきたわけです。教育委員会は、財務部長はスピード違反をして停職したようなものだと。政治資金規正法虚偽記載をスピード違反と同じだと言ってしまう教育委員会もすごく大変なんで、この問題についてはしっかりと追及していかなければならないと思うんです。
 教育基本法改正で、倫理観、規範意識をしっかりと持たせようという中で、民主党は予算の見直しで、道徳教育の予算を半分以下に削ったわけです。これはある意味で、教育基本法違反ということにもつながっていく問題だと思うんです。教育界の憲法が教育基本法ですから、これに違反するあらゆる教育施策というのは矛盾してくると思うわけで、そのへんのご意見を聞かせてください。
安倍相談役
 高校無償化の問題なんですが、個別政策でありますが、自民党はたしか幼児教育の無償化を出しましたよね。金目においては、7000億で、そっちの方が大きいのかな。高校無償化は3900億ぐらい。 それよりも大きなものを出したんだと思うんですが、幼児教育の無償化ということをわれわれ、主張することが大切なのかなと思います。高校というのは、今でも行かない人もいるということもありますが。
 他方、私立の高校に対しては、おっしゃるとおりなんです。そこでどうするかということなんですが、私立は私立の建学の精神を守るためにも、本来、財政基盤をすべて国に頼っては、公的な資金が入っていることにおいて建学の精神を守ることに制約を受けざるを得ないかもしれないという、大きな問題点もはらんでいるんだろうなと思います。
 今の自民党案について、私、初めてお伺いしたので、なかなか難しいんですが、地方の事情としては公立と私立……今でも12万と36万円ぐらいですか。そこは今のような工夫も必要なんだろうなと思います。
 それと山梨の問題点を浮き彫りにするというのは、私はいいと思います。いま言った人も含めて、戒告処分等々を受けた人がみんな、出世しているんですよね。一方、告発をした人は結局、辞めざるを得なくなっているでしょう。告発をした人が辞めざるを得なくなって、告発されて処分された人がみんな、順調に教頭か何かになっているという、恐るべき山梨の実態があって、ここはまさにある意味の戦後レジームの典型みたいなところがあって、もたれ合いなんです。わが党も、わが党の県連も、日教組ももたれ合いなんです。
 実態は、あのとき問題を起こして、乗り込んでいったら、この問題を取り上げるのを県会議員は全部反対したんですから。そして当時の教育委員長は、学校が百何十校あって、そんなに調べられないと言ってのけたわけです。教育委員長がですよ。たまげたわけです。地元の警察も動きが鈍いという、恐るべき……これはやっぱり内申書を人質に取っているという力なんだろうと思うんです。
 ここは、そういう意味ではいい候補を立てましたね。女性の若い先生でしょう。
義家政策副委員長
 30歳です。(宮川典子自民党公認候補予定者)
安倍相談役
 だから、あそこを一つ大きな焦点にして、全国的に、山梨の選挙区にスポットライトを当てることが大切ではないかと思いますね。
 そこで、いわば権力を日教組側は握ったものですから、学校でさまざまな問題が、それをかさに着て出てくると思うんです。かつてジェンダーフリー110番というのをやったら、全国から、こんなことやってますというファックスや手紙がどんどん来たんです。その実例を挙げながら追及をしていったということがありますが、日教組110番的なものをぜひ党に置いていただいて、これをアピールしてもらいたいなと思います。
細田博之清和研事務総長
 義家先生、私学助成というのは、私立の高校にどのぐらい入っているんですか。
義家政策副委員長
 交付税措置されるものですから、都道府県によって私学助成がどれだけ当てられているかということは、各都道府県、ばらばらなんです。
細田事務総長
 1人当たりで割ってみたり、どのぐらいあるか。いろんな意味で私学助成のほうを増やすということはあり得るんですよね。公立はいわば丸抱えだから。そういう選択肢はないのかしらね。それから、どのぐらいの割合になっているか。田舎の場合は、けっこうもらってはいるんだけれども。
義家政策副委員長
 それは早急にしようと思います。ただ、ちょっと危ないのは、実は今回の無償化の法案で、対象になっているのが、「各種学校等」というのも対象になっているんです。これは何を想定しているかというと、ブラジル人学校、インターナショナル・スクール、朝鮮学校、これらも全部、無償化の11万8000円が入る対象の学校なんです。たぶん民主党の戦略としては、この部分の線引きで修正協議に自民党を応じさせて、この法案を通そうという腹で、わざとグレーゾーンをつくって出してきているんですが、このへんにどう向き合うかというところが非常に悩ましいところなんです。
高市政策委員長代理
 進行者からも1問、質問をしてもいいでしょうか。
 安倍先生が総裁選挙に立候補される時に、私から安倍先生にお渡しした政策案の中に入れさせていただいた自衛隊法100条改正案について伺います。
 今日のお話の冒頭に、北朝鮮に日本人が拉致されている中でのコメ支援について、米国の北朝鮮問題担当大使から「もしそんなことが起こったら(アメリカの少女が拉致されたら)、今ごろ米軍の海兵隊が平壌を占領していますよ。日本はできないでしょう。できないんだったらコメを援助することです。」と言われたという、屈辱的な話を紹介されました。
 日本では、装備や能力から考えると、警察や海上保安庁ではなくて自衛隊が対処するほうが効果的であろうと思われる事態が起きても、「極力、自衛隊は使わないようにしよう」というのが、過去長い間の政界の空気でもあり、世の中の空気でもあったように思います。しかし、世界各地で日本人が誘拐される事件も発生しています。私は、自衛権の対象として海外にいる日本人もしっかりと守るというのが、主権国家としてあるべき姿だと思っております。
自衛隊法100条改正案は、7年か8年前に私が条文化して、今も提出できないままに持っている法律案です。これは、自衛隊の任務に「海外における邦人奪還」を加える内容です。
 例えば海外で日本人が誘拐された場合、日本国は、まず外交的保護権を発動しますが、これは、相手国が日本人を保護しようとしてくれない場合や相手国の軍隊に能力が無い場合には意味がありません。次に警察官の派遣が法的に可能になりましたが、相手国からの要請がなければ警察官を派遣できません。そうしますと、現行法では奪還手段が閉ざされるケースも想定できます。相手国政府が崩壊している場合や、政府が犯罪に加担している場合はこれに当たります。
 自衛隊法には、国民を海外で奪還することを可能にする備えの条文すらありません。現場の自衛官に聞きますと、「装備や能力から考えたら、訓練さえすれば奪還作戦はできない話ではない。アメリカやドイツでは、国民を奪還する義務を法制度で定めているが、日本にはそういう条文がないので、訓練すら許されない」ということでした。
 実行するかどうかは政治判断ですが、相手国の主権を侵さずに、作戦を完遂したらすぐに撤収するといった条件を付けた上で、備えとして、自衛隊法100条を改正するという考え方についてどう思われますか。
安倍相談役
 自衛隊法の100条については、当然改正しなければいけないんですが、その以前に、憲法解釈として、集団的自衛権の行使プラス海外での武器使用についての解釈を変える必要があると思うんです。安倍内閣時代の安保法制懇で、類型の中の一つが海外での武器の使用なんですが、いわば緊急避難的な武器の使用しかできない。任務を遂行するための武器の使用はできないわけです。日本の場合は憲法との関係がありますので、武力行使と武器の使用を峻別して、しかも、武器の使用を非常に制限的にしていますから。
 ただ、今でも、グレーゾーンではあるんですが、武器の使用を任務、目的のために使える。ですから、まず任務、目的のために使えるということを明確にした上において、100条を改正して、あの中で、例えば自衛隊機を邦人救出のために使えますが、「安全を確保して」ということになったでしょう。安全を確保してという制限がかかっていますよね。安全確保がされているんだったらjalやanaが行くのに、行けないから自衛隊が行くのに、安全確保しろというのがあるから、事実上できない形になっていますから、そこはやらないといけないんだろうと思うんです。
 冒頭に米国と対等になれということを申し上げたんですが、例えばある国でもし大きな暴動が発生をして、邦人を保護する、どう対処するかというマニュアルはあるんですが、そのマニュアルをつくるときには、米側と協議するんです。なぜかといえば、自衛隊機を飛ばせないではないですか。いま言った、実際そうなった場合。それはやはりアメリカの大使公邸とか大使館に集合させて、そこから海兵隊に輸送してもらうということに、結果としてなるわけです。これはある程度、われわれは5兆円近い予算を自衛隊につぎ込んでいるわけですから、いま高市先生が言ったように、法的にできないのであれば、法的にある程度のことはできるようにするべきではないか。
 それができないんだというふうにわれわれ、思い込んできて、しないほうがいいんだという、これもまさにマインドコントロールの中にいたのかなと思うわけであって、こういう議論をすると、救出に行った自衛隊がそこに残って、満州国をつくったようなことをするのではないかという議論なんですよね。きわめてばかばかしい議論ですから、そういう考え方から脱却すべきではないかと思います。
 先程高市先生がおっしゃったように、海上保安庁があって自衛隊があって警察がありますが、国家資源の有効活用ですから、これは自衛隊が出ていくというところは自衛隊をちゃんと使うと。意外とセクショナリズムがあって、警察が頑張ったりとかするんですよね。かつて小泉政権時代に、官邸を防御する上において、自衛隊も活用したらどうかという意見が出た瞬間に、官邸を警備しているお巡りさんたちが重装備になったんです。私、官房副長官をやっていてびっくりしたんだけれども、急に自動小銃みたいなものを持って、ヘルメットを被って防弾チョッキを着てという。
 そういうセクショナリズムもあるんですが、やはりそのときに、このことについては自衛隊がやるのが危険で警察ならいいというのは明らかに間違いで、緊急事態にも、一番最初に機動隊しか……今、有事法制ができましたから大丈夫ですが、その前は。だって、機動隊が最初に出ていくという、次々と全滅して初めて自衛隊の出番だみたいな、そんな議論がなされていたこともあったんだと思います。やっとまともにはなっているんですが、しかし、最後の一押しがわりと大きな壁なんですね。
高市委員政策委員長代理
 ありがとうございました。
義家政策副委員長
 もう1点だけ、主権にかかわる問題なんですが、先日報道で、中国側が東シナ海のガス田の開発に対して、「主権はわれわれにある」という発言、あるいは竹島の問題は、高校の指導要領から中学の指導要領では解説書に書いたんですが、それも落ちて、中学の領土教育に則って高校でも教えるという、ぼやかした配慮なわけですが、竹島の日というのは国ではないですよね。
 外交的配慮の中で、与党のときはなかなか難しいとこがあるのやもしれませんけれども、ガス田の問題あるいは竹島の問題について、野党になった今こそ、われわれはきっちりスタンスを示して、声をあげていくべき問題ではないかと思うわけです。特に東シナ海のガス田においては、安倍総理時代、外交の中でかなりさまざまやってきたものですが、このへんの経緯とか今の状況について、どのようなお考えを持っておられるのか、ぜひお聞かせください。
安倍相談役
 まずガス田の問題については、私、官房長官時代なんですが、その前、官房長官の前の段階で、中川昭一さんが経済産業大臣でした。中川さんは非常にタフな交渉を展開をしました。そして、中川さんは「鉱区設定をしますよ」ということを言ってのけたわけです。向こう側はびっくりしたんですよ。その後、中川さんが経産大臣を辞めた後、ちょっと風向きが変わったんですが、私はたまたま官房長官でしたから、やはり時間は中国側に有利に展開をしていると。彼らはどんどん掘っているんですから、既成事実を積み重ねていって。
 中間線より向こう側を掘っているんだけれども、こちら側にも事実上……下がつながっていますから。そこで、国際司法の場に持っていくと、既成事実を積み上げていっているほうが強くなってきてしまったんです。日本は外交的配慮で、こちらが掘らなければ向こう側もやらないかなと言って自制していたら、全然お構いなしに向こうがどんどん掘っていった。
 実態としては、こちらが全然やってないものですから、日本はやる気がないというふうに取られてしまう状況まで実はきているんです。ですから、こちら側としては、ある段階、期限を区切って交渉をしなければいけないということで、期限を区切ったんです。期限を区切って、ここまでに共同開発ということで、「乗ってこなければ、われわれは鉱区を設定をしていますから、掘れますよ。そのための漁業交渉を始める」ということを向こう側に通告したんです。外務省はずいぶん反対をしましたが、それを決めていました。そうしたら、向こう側は結局、すぐに乗ってきたんです。
 その後、安倍政権の1年間があって、福田政権になって、安倍政権時代は共同開発について喧々諤々やったんだけれども、うまくいかなかった、福田政権で向こう側が最終的に乗ってきた。
 ところが、今、その約束を破っているではないですか。麻生政権時代にはこそこそ破っていたんだけれども、今、堂々と破っていて、岡田克也外務大臣が相当の考えがあると言ったからには、やらないと、まさに日本は口では言うけれども、やらないじゃないかということになってくるんだろうと思います。中国との交渉はゲーム的側面が強いですから、こちらがちゃんとした決意と、その裏付けをもって交渉していくことが大切だなと。
 ですから、期限を切らなければいけません。こちら側も掘らなければ、向こうが言っていることがやや根拠があるんですよね。「共同開発と言っているけれども、もうこっち側は開発しちゃったんだから、共同開発する必要はありませんよ。おたくのほうは全然ゼロでしょう。じゃあ、一緒にこっち側をやりましょう」というのが彼らの主張なんです。中間線からこちら側は中国側のもの、共同開発するのは中間線からそっちですよと。ややその主張に力を与えてしまっていますから、こちら側もやるんだということを実際にある程度示したっていいんだろうと思います。
 もう1点、竹島の問題について言えば、竹島については自制してきたんです。本来であれば、例えば尖閣と竹島を比べれば、尖閣は日本が完全に今、実効的に支配をしていますから、領土問題がないという立場ですから、ことさら教科書にすら書く必要もないと私は思っているんです。「領土問題って、そんなものはありませんよ。まったくないですよ」という主張でいいんだと思うんですが、竹島は向こう側が不法占拠していますから、不法占拠してますよという事実を書かなければいけないし、領土問題として残っているという事実を書かなければいけない。
 今まで外交的配慮で、これは私の反省も含めてなんですが、外相会談、あるいは首脳会談において、竹島の問題は一回も定義をしていないんですよ。つまり、「われわれは、これは本来であれば不法占拠されているんだから、こちらが返せと必ず言うんだけれども、それは言わないから、外交問題上、一応横に置いておきましょうね。しかし、日本はこれは固有の領土だということを、日本の中ではちゃんと示していきますよ」と、こういう線引きができていたものだと思ったら、ところが、善意を示しても善意でこたえなかったと。日本は言わないんだから、そもそもその論拠が薄いんだろうなということになってきてしまったのかなと思います。
 竹島は細田先生、一言あるでしょうから。
細田事務総長
 竹島は私の選挙区なんで、ちょっと言いますと、義家先生がおっしゃったように、今までは遠慮というか、政府与党は日韓関係を大切にするひつようがあるという見地からずっと控えてきた。しかし、この2月22日の竹島の日というのは島根県で条例で制定しているんだけれども、野党になった今は正論に立ち直り、竹島問題をしっかり提起しようということを内々決めています。
 歴史的に見ると、明らかにわれわれはさまざまな証拠があるんで、私が官房長官時代にも、韓国の大使に会い、韓国から来た人には全部、竹島の由来を書いた、日本人の書いた非常に客観公平な本を渡して、やってきたんです。(注)田村清三郎著「島根県竹島の新研究」島根県庁発行。だから韓国の人が来ると、「あなたは竹島問題についてうるさいというか、意見があるようには聞いていますが、今日はその問題はともかくとして」とか言ってくるんだけれども、確かに政府与党であると、日韓という大きな問題の中で、竹島は絶対われわれのものだというところからケンカを始めると大変だという面があって、少しずつ控えてきたのと、日韓漁業協定上も、あそこは双方、論争があるということは認めているんです。だから、暫定水域というものをつくって、山口県も兵庫県も、鳥取県も皆、関係しているんだけれども、そういう交渉であるということ。
 外務省は、ホームページではっきりと「竹島はわが国の領土である」ということが書いてあるから、皆さんもご覧いただきたいということ。
 それから、韓国大使がだいぶやられたんですね。高野(紀元)大使は、「これはわれわれの領土である」ということを明確に言った瞬間に、一切の外交関係を高野大使にはやらせないということで、さんざん日干しにあっていたという、向こうが悪いんだけれども、そういう経緯もあります。
 だから、与党・政府としては、言うけれども、強引に取り返したり、主張したりしないということをずっとやってきたけれども、野党になって、そんなことをやる必要はないんです。だからわれわれとしては、島根県を中心に、もう一度やろうと。政府に対しても、北方領土と同じように、竹島の日をつくれということは常に言ってきているんだけれどもね。
安倍相談役
 もう1点付け加えますと、結局、除外した、おそらく65年の基本条約のときにそういう話があったのかもしれませんが、しかし、これは結局、向こう側には通じなかったんです。特に左翼政権ができましたからね。
 そうすると、例えば首脳会談では定義しないけれども、外相会談では竹島の問題については一言いうと。しかし、外相会談、首脳会談ではそれを深掘りしなくても、一言だけ言っておくということは、やはり残しておかないと、結局彼らはそこで満足せずに、日本の教育の中身にまで足を踏み込んできたではないですか。ちょっと異常ですよね。
 それといま細田さんがおっしゃった、暫定水域ということは一つの知恵だったんだと思うんですが、竹島は向こうで実効支配しているが、その周りの水域については日韓共同管理ということにしたんだけれども、それぞれ自分の国が自分の漁船については、国際法をちゃんと守って漁業をしているかどうか、タッグを組んで守っているかということを取り締まることになっているんだけれども、韓国側は事実上、取り締まらないんだよね。けっこうめちゃくちゃやるものだから、あの中には今、日本の船はいないでしょう。
細田事務総長
 あんまりいない。ただ、こっちへ進入してくるものだから、海上保安庁は時々捕まえるようにはなった。だけど、やられっぱなしなんだ。
安倍相談役
 やられっぱなしになっているのと、あと経済水域とは別に、竹島を中心とした領海のところは完全に向こう側でありまして、盧武鉉時代に、向こう側の船が来て、そこで水質検査をすると言ったから、私は当時、官房長官だったんですが、それは認めないということを言ったんだけれども、とうとう入ってきました。それでわれわれが海保の船で排除したんだけれども、その後、竹島を中心とする領海の中に入ったときに、そこに海保の船が入ったら、何と向こう側は巡洋艦を持ってきたわけです。盧武鉉が巡洋艦をここに配置をして、艦隊を置いて、そのときに情報収集したら、盧武鉉大統領が危害射撃を許可したんですよ。つまり、相手を殺傷してもかまわない、射撃をしろという指示を出したわけです。
 ここでどうするかという決断をわれわれ、迫られまして、これは大変なことになるんで、万止むを得ないという観点から、向こうの領海の中までは追っていかないという決断をせざるを得なかったんです。
 付け加えますと、当時、石川(裕己)という海上保安庁の長官で、私が「こんな人を相手に、海保の人の人命が危険な仕事をさせるわけにはいかないから、これについては中には入らないという決断をします」と言ったら、「いや、いまの官房長官のお言葉は承服しかねる。われわれは危険な中で仕事をする、これが海保の誇りです。いまの発言は了解できない」と言ったんで、「じゃあ、危険だからやめるんじゃなくて、外交的配慮でこれはやめる」と言ったら、「それならけっこうです」と彼は言ったんで、なかなか立派な男だなと今でも思っているんですが、そういう経緯なんかもあるわけです。
 それを考えると、自制してきても全然意味がなかった。むしろ向こうが正当性を持っていて……今、世界中の大学図書館に全部、英文に訳して、竹島は韓国のものだという本を送って置いているんです。こちらもちょっとカウンター攻撃をしないと……。
細田事務総長
 今のやつを英文にして配らないといけない。
安倍相談役
 配らないと。今、ものすごいそういうことをやっているんですね。呼称名もそうだけれども、例の「日本海」というのはおかしいということを、航空会社などにも今、韓国は圧力をかけています。航空会社が、画面に出てくるではないですか、あれに「ジャパン・シー」というのを出したら韓国人はボイコットするぞというのを、今、けっこうやっているんです。
高市政策委員長代理
 ありがとうございました。
 今日は、安倍先生から貴重なエピソードとともに、さまざまな政策を構築する上での骨組みとなる理念をお聞かせいただいたことに、感謝申し上げます。本当にありがとうございました。



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