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政策委員会 第9回


講演 アメリカの『保守』を見る眼
−オバマ大統領はなぜ「保守化」せざるをえないのか−
講師 (社)アジアフォーラム・ジャパン(afj) 吉原欽一専務理事

平成22年2月24日
下村博文政策委員長
 ただ今から政策委員会を開催をいたします。今日講師をしていただく吉原(欽一)さん、アメリカに行ってこられて、昨日ですか、お帰りになったばかりでございますので、生のアメリカ情勢も併せていろいろとお話しをしていただけるのではないかと思いますが、今日は[アメリカの『保守』を見る眼−オバマ大統領はなぜ「保守化」せざるをえないのか−]というテーマでお話しをしていただくことになっております。
 吉原さんはアジアフォーラム・ジャパン――シンクタンクの専務理事をされておられまして、このアジアフォーラム・ジャパンは今、アジアの中でシンクタンクとしては18番、日本ではトップ2に選定をされた、大変な、意欲的なまた力のあるシンクタンクの中心的なお仕事をされておられる方でございます。また、『現代アメリカ政治を見る眼−保守とグラスルーツ・ポリティクス』という本、それから、アメリカ人の政治ということで、日本で最もアメリカの保守・グラスルーツについて精通された方でございまして、これから自民党はどう再生するか、あるいは民主党の社会主義的なバラマキ政策に対応する新たな保守主義としての旗を……アメリカのノウハウをそのまま導入してもかなり日本で通用するのではないかということについて精通をされ、また見識を持っておられる方でございます。ぜひ楽しみにお話を聞いていただければと思います。
 それでは早速、吉原先生、よろしくお願いいたします。

吉原欽一専務理事
 吉原でございます。よろしくお願いいたします。
 本日はお招きをいただきましてありがとうございます。下村委員長から、30分ぐらいでプレゼンをして、そしてできる限り先生方と意見交換をさせていただきたいとお伺いしております。そのような時間配分でお話しをさせていただきたいと思います。レジュメを用意させていただきました。そして、参考資料も用意させていただきました。題名は、「アメリカの『保守』を見る眼」ということで、「オバマ大統領はなぜ『保守化』せざるをえないのか」でございます。
 まず初めに、最近アメリカの保守が非常に強くなってきています。復活しています。その理由は何かということについてお話しをさせていただきます。そしてアメリカの保守がなぜ強いのか、なぜしぶといのかという点につきまして、70年代のニューライトのケースをお話しさせていただき、そのうえで日本の保守へのインプリケーション(含意)について言及させていただきたいと考えております。
 アメリカの保守は、昨年中盤から非常に活発に活動しております。皆さん思いだしていただきたいのですが、アメリカの保守を代表する政党といえば、共和党ということになりますが、共和党は2008年大統領選挙でオバマ候補に完敗しました。2008年の大統領選挙・連邦議会選挙は、「オバマ人気」に支えられた民主党が大勝し、共和党は歴史的大敗を喫したのです。ブッシュ大統領の不人気とスキャンダルにまみれた共和党の不人気ぶりは、目を覆うばかりでありました。当時は、もう共和党の再生はないとまで語られたほどでありました。ところが最近は、どうもアメリカの政治状況が違ってきているようなのです。
 昨年11月20日に発表されたギャラップの世論調査は、衝撃的でありました。オバマ支持率が初めて5割を切ったのです。これは戦後の大統領のうち4番目の早さです。就任直後の調査で66%もあった支持率が、一年もしないうちに5割を切り49%にまで落ち込むという結果を誰が予想できたでしょうか。
こうした支持率の急降下の背景には、オバマ大統領が進める医療保険(ヘルスケア)改革への反発、そして、たびかさなる景気刺激対策にもかかわらず09年10月の雇用統計では26年ぶりに失業率が10%を超えるなどオバマ政権の経済政策に対する米国民の不信の高まりがあります。さらに、アフガン増派をめぐる政権内部の不協和音が表面化し、それと呼応するかのような増派の決断に至るまでのオバマ大統領の優柔不断な対応も原因の一つとしてあげることができましょう。
 2009年11月、アメリカではバージニア州とニュージャージー州の知事選挙がありましたが、この二つの選挙は驚くべき結果がでました。なんと両州ともに共和党候補が勝利したのです。この二州の知事選挙は、オバマ大統領の約一年間の政権運営を国民がどのように見ているかを問う選挙であるとともに、10年11月に行われる連邦議会選挙(中間選挙)の行方を占う前哨戦と目される選挙でありました。そのために非常に注目された選挙でした。バージニア州は、08年大統領選で実に44年ぶりに民主党の大統領候補が勝利した州であり、他方ニュージャージー州は民主党の金城湯池といわれる民主党が強い州であります。この選挙のために、オバマ大統領はバージニア州に2回、ニュージャージー州にはなんと3回にわたって応援に入るほどの力の入れようでありました。その重要な選挙で共和党候補が勝利を収めたのであります。
 それだけではありません。本年1月に行われたマサチューセッツ州で行われた連邦議会上院の補欠選挙で、あろうことか民主党候補が負けてしまったのです。私は、この一報を聞いた時、一瞬耳を疑いました。この選挙は、民主党リベラル派の重鎮といわれ、昨年8月に亡くなったエドワード・ケネディ上院議員の後任を決めるものでした。ケネディ議員が46年間守ってきた地盤で、民主党候補が負けるなどということは考えられないことです。しかし、あろうことか共和党のスコット・ブラウン候補が勝利したのです。このインパクトは強烈でした。日本で例えれば、小沢幹事長の地元、岩手県の参院選補欠選挙で自民党候補が勝つこと以上の衝撃があったはずです。恐らくオバマ大統領自身も側近たちも、この選挙で負けるはずがないと思っていたに違いありません。オバマ大統領は、この補選での勝利で弾みをつけて、1月の一般教書演説で、医療保険改革法案の成立まであと一歩のところまで来たことを大々的にアピールする算段を立てていたことでしょう。しかし敗北で状況は一変しました。
 では、なぜアメリカの保守は、早々に復活したのでしょうか?その理由はいろいろと考えられると思うのですが、まず考えられることは、08年大統領選挙でオバマ候補に投票した保守系のアメリカ人、約300万人と言われていますが、彼らが、オバマ政権に失望したということです。先の大統領選挙でオバマ候補に投票した保守派の人々の事を「オバマコン(オバマ・コンサーバティブ)」と呼ぶのですが、彼らの多くは、「リバタリアン(市場経済を支持し増税に反対し、小さな政府を強く主張する人々)」であり、オバマ政権が主導する政府主導の医療保険改革法案に対して極めて強いアレルギー反応を示しています。彼らの中でも過激な人々が、オバマ政権を社会主義的な政権として強い反対運動を起こしたのです。
 2009年アメリカでは、確定申告の提出期限にあたる4月15日、保守系グラスルーツ団体が、オバマ大統領が推進しようとしている諸政策は「大きな政府」と増税につながるとして全国各地で抗議集会を開催しました。植民地時代の反増税運動である「ボストン茶会事件」にちなんで、この運動は、「ティー・パーティー・プロテスト」と呼ばれています。この運動の中核部隊は、先程お話ししましたリバタリアンです。この運動は、その後オバマ批判を繰り広げ保守主義運動の大きなうねりをつくりあげるまでに発展していきました。特に11月12日に行われたワシントンd.cでの抗議デモは、首都で実施された保守が主催するデモでは過去最大の規模となり、「怒れるアメリカ人たち」で埋め尽くされたのです。この抗議運動の大きな焦点は医療保険改革でありました。すなわち、この改革は、民業を圧迫し非効率な政府機関を増やし、さらに新たな保険制度の財源確保のために増税が必要となると訴えたのです。昨年11月に行われた二つの州の州知事選挙の結果も、本年1月に行われたマサチューセッツ州の上院議員補欠選挙の選挙結果も、こうした保守系グラスルーツ運動の影響を受けたのです。
 このような反増税運動が盛り上がりを見せている背景には、保守系メディアの存在があります。09年9月末の調査で保守系のウォールストリート・ジャーナル紙(200万部)が、usaトゥデイ紙(190万部)を発行部数で抜き去り一位になりました。オバマ大統領と民主党の政策を批判している保守系tvのfoxは、視聴率でcnnやmsnbcを抜きました。一方、保守系トークラジオ番組が昼夜を分かたず「大きな政府」と「増税」を激しく攻撃しており、高い聴視率を得ています。ラッシュ・リンボーというトークラジオホストの番組は、全米600局以上のラジオ局で流され、ワシントン・ポスト紙の推定では少なくとも1400万〜2500万人のリスナーがいると言われています。こうした保守系のメディアが、オバマ政権を「社会主義政権」、「大きな政府」と一斉に攻撃し、保守系グラスルーツ運動の後押しをしているのが現状です。
 こうした保守系グラスルーツ運動の広がりは、確実に本年11月の中間選挙の行方を大きく左右するものとなっています。それは、単に共和党に有利になるということだけではありません。共和党の中でも現職議員やいわゆるエスタブリッシュメントと言われる候補者たちは、戦々恐々としています。つまり、共和党でも本当に「小さな政府」と「減税」など、保守が要求する政策アジェンダを主張しているのかについて厳しく問われているのです。たとえば、フロリダ州の共和党上院議員選挙の予備選挙について申し上げます。フロリダ州上院議員選挙は、共和党現職議員が引退するので、現職知事のチャーリー・クリスト氏が早くから予備選挙に名乗りを上げていました。クリスト氏は、共和党の大統領候補にまで名前が挙がった人です。当然のことながら、10月頃までは共和党の予備選挙では、圧勝すると思われていました。ところが、11月頃からどうも様子が違ってきているのです。予備選挙で敗けそうなんです。バージニア州やニュージャージー州などで民主党港を敗北に追い込んだ、ティー・パーティー運動グループが別の共和党候補を応援し始めたのです。その候補者は、マルコ・ルビオという人なんですが、キューバからの移民の子で38 歳です。かつてバーテンをやってた人です。バーテンが悪いという意味じゃありませんよ。そういう名もない、本当にグラスルーツから這い上がってきた人です。これが今や、ディック・チェイニー元副大統領や名だたる人々が支持しています。私も今回の訪米で、マルコ・ルビオ候補にワシントンでお会いしてインタビューしてきました。じっくり話した日本人は初めてだと言っていましたが、筋金入りの保守という印象を受けました。恐らく彼は、現職のフロリダ州知事を予備選挙で破り、11月の本選挙でも当選してくるのではないでしょうか。「ニュー・リパブリック」誌という有名なリベラル系の雑誌がありますけれども、この雑誌の中でもマルコ・ルビオは「リパブリカン・オバマ」(共和党のオバマ)というふうにしていち早く紹介されています。共和党の次のスターは彼だと、リベラルの雑誌はそのように報じています。
 今回アメリカに行って感じたことは、オバマ政権が若干自信喪失気味だということでした。私は特にオバマさんが嫌いなわけでもありませんけども、なぜオバマさんは自信がないのかなと思うんです。これはアメリカの保守とリベラルの差ではないかと考えてしまいます。結論から先に申し上げますと、オバマ大統領というポピュリズムの運動の中から出てきた大統領を支えるというシステムともいうべきものがリベラルにはないのではないかと考えてしまいます。
 ブッシュ大統領の事を思い出してください。世界中の嫌われ者と言われました。日本のメディアではさんざんだったあのブッシュさんが、なぜ2回も当選できたのか。8年も政権を担当することができるのか。なぜ今オバマ大統領は、わずか1年なのに、80年大統領選挙で敗北したカーター大統領と同様に一期限りの大統領などと言われるのでしょうか。これはfp誌で外交評論家のウォルター・ラッセル・ミード氏が言ってるんです。オバマ大統領は第2のカーターだと。
 それから、このレジュメにも書かせていただきましたけども、オバマ政権にはメッセージがないと言われています。これはワシントン・ポストのe・j・ディオン――有名なリベラル系のコラムニストですけれども、オバマ政権にはメッセージがないと言うんです。メッセージかないということはアメリカではどういうことかというと、アイデアがないということなんです。策が無いということをいうんですね。メッセージは思いつきや何かということじゃないんです。アメリカでメッセージがないという判断を下されるのは、周りのスタッフに策がないということなのです。失礼な言い方をすると、オバマ政権のスタッフはボンクラだというレッテルをリベラル内からも貼られてしまったということなのです。
 私もオバマ政権はスタッフが悪いと思います。ブッシュさんだってオバマさんだって個人的にいろいろな能力の限界があるんだと思いますけども、スタッフに決定的な差があると思います。オバマ政権の例えばデビッド・アクセルロッドとかラーム・エマニュエル、バレリー・ジャレット等々。彼らは「オバマ大好き人間」なんですね。ところが、ブッシュ大統領の周囲を固めていたスタッフ達はそうではありませんでした。ブッシュ政権の時に嫌われ役だったチェイニーという副大統領がいますね。これぜひ覚えておいていただきたいのですが、チェイニー元副大統領はアメリカの議会史上初めて下院議会に個人的な事務所を持った副大統領なんです。アメリカの副大統領は、上院議会の議長を務めますから、上院議会に事務所があります。しかし、チェイニー副大統領は下院議会にも自前の事務所を持ったんです。なぜか。それはチェイニー氏が下院議会の重要性を熟知していたからです。だからこそ上下両院院議会とホワイトハウスのリエゾン――パイプ役をやらせるスタッフを下院議会の事務所に配置したのです。もしブッシュ−チェイニー体制だったらば、医療保険改革法案は、上下両院議会で圧倒的多数を持つ現在の議会勢力のもとで通っていたでしょうね。そういう重要法案を通す能力を持ったスタッフ、レジュメに書いてありますが、私はそうしたスタッフを「政策知識人(ポリシー・インテレクチュアル)と呼んでいますが。こうしたポリーシ―インテレクチュアルと呼ばれる人々が幾重にもとぐろを巻いてブッシュ政権の周りにはいました。この「政策知識人」に対応する言葉として、「パブリック・インテレクチュアル」という言葉があります。日本はどうなのかというと、これまで官僚が政策知識人の役割を果たしていた。これからどうなるか分かりませんけれども、アメリカの政治では、政策知識人――ポリシー・インテレクチュアルの層において、共和党(保守系)が圧倒的に強いんです。この点をぜひご認識いただきたいと思います。 
 オバマ大統領が失速してると申し上げましたけども、一方で存在感を増してやる気満々なのがヒラリー・クリントン国務長官です。この間もちょうど、2月18日、私がアメリカのワシントンdcにいた時に、ダライ・ラマ師がオバマ大統領に会いたいという申し入れをしました。オバマ大統領は、師に結果的に会いました。しかし、ひどい扱いだったですね。会見場となったマップルームというのは地下です。かつてビリヤード場だったと言われています。そのマップルームで「プライベート」に会いました。写真はホワイトハウスで公開しない。ほかの民間のサイトで公開したんですね。オバマ大統領は、中国に遠慮して本当は会いたくなかったんでしょう。ところが、ヒラリー・クリントン氏は、オバマ大統領が会わないのなら、私が国務省で会いましょう、という旨の事を言ったとワシントンでは報じられています。このへんの駆け引きのうまさ。スタッフの相違ですね。ヒラリー国務長官の周りにいるポリシー・インテレクチュアルの秀逸さを感じます。クリントン国務長官、いま絶好調ですね。この間のイラン制裁に対するステートメント、みごとだったですね。ヒラリーは外交において、どんどん得点を稼いでいるようです。
 面白い記事が2月21日、日曜日のワシントン・ポスト紙に出ました。オバマはもう最高裁の判事になるのが一番い良いのではないかという記事です。オバマ大統領は、自分で自分を最高裁の判事に任命して、バイデン副大統領に代えてヒラリーを副大統領に任命して、そして次の大統領選挙でヒラリー大統領を実現させれば、オバマは最高裁の判事になれる可能性があるというのです。こういう話がワシントン・ポスト紙に出てるんです。
 ヒラリーさんは、2004年の大統領選挙に出ませんでした。なぜか。アメリカの保守系グラスルーツの強さ、シンクタンク、ロビー団体、この強さを目の当たりにして、出馬を見送ったんです。2002年の中間選挙で民主党が共和党に完敗した翌年、ヒラリーさんは自前のシンクタンクを設立します。そのシンクタンクのモデルになったのが、保守系シンクタンクのヘリテージ財団なのです。ヒラリーさんは、保守がシンクタンクと連携をして色々なアイディアを生み出しそれをグラスルーツ運動と連携していたということを十分に認識してcap(center for american progress)というシンクタンクを作り上げたのです。このシンクタンクは、今やヒラリー国務長官の活動には欠かせない重要な役割を担っています。
 さて次に、なぜアメリカの保守は強いのかということについて、70年代のニューライトの台頭を例証してお話しをさせていただきたいと思います。時間の関係上、ちょっと端折りながら話しますがご容赦ください。
 60年代から70年代にかけて……その前ですけれども、アメリカという国はどういう国かといいますと、リベラルの国だと考えられていました。これは知識人たちが、アメリカというのはヨーロッパ的な保守主義が根づくような国ではない、アメリカというのはリベラルこそが伝統だと考えていたのです。ですから、アメリカには「リベラル・コンセンサス」がありました。例えば「大きな政府」。これはニューディール的な資本主義をベースにしている、そういうリベラル・コンセンサスです。
 ところが、1960年代後半から70年代にかけまして、ベトナム戦争が始まります。また、公民権運動が始まります。その結果、学生運動が激化するわけです。そして、リベラルなアメリカとリベラル体質そのものに対して批判をするわけです。そこでリベラルに対する認識が非常に搖らいでくるわけです。これは「リベラル・コンセンサスの崩壊」と呼ばれていますが、その結果として民主党の内部も分裂していくわけです。そうして民主党はどんどんと左翼が強くなっていきました。やがて72年の大統領選挙を迎えるわけですが、この大統領選挙では、左派のジョージ・マクガバンという人が民主党の大統領選挙に選出されることになります。マクガバン候補は、大敗しますが、この人は左翼というよりも「社会主義者」と言われていた人です。その社会主義者が民主党の大統領候補になるという状況が生まれてしまったわけです。そして、アメリカ国民の間からは、徐々に民主党とリベラルに対して懐疑の念が生まれるようになっていくわけです。
 そこで保守の出番です。これまで劣等感に苛まれていた保守に、いよいよ出番が訪れたわけです。「リベラル・コンセンサス」が崩壊しますと、その後に色々な個別の政治問題が出てくるようになります。リベラル・コンセンサスが崩壊しますと、権威とか、これまで信じていたものが信じられなくなってきます。色々な細かいシングルイシューというものが出てくるわけです。特に社会問題です。例えば中絶の問題、犯罪の問題、家族の問題、銃規制問題、男女平等権の憲法修正案などの問題です。さらには増税の問題、規制緩和、そういった色々なシングルイシューが出てくるようになります。
 そこで、ニューライト(これはネオコンじゃありません)という新しい保守が登場してくることとなります。レジュメに書かせていただきましたけれども、私がここでお話しさせていただくニューライトは、全部活動家のことです。政治家のことではありません。当時のニューライトには、四天王と呼ばれた秀逸な活動家がいました。ハワード・フィリップス、ポール・ワイリック、それからリチャード・ヴィゲリ、テリー・ドーランの4人です。私は、このうち2人、フィリップスとワイリックにはインタビューしました。あと2人はもう亡くなりました。この4人が、70年代に保守の勝利の戦略を構築しました。その勝利の戦略は、現在に至るまで、脈々と保守運動に受け継がれてきています。70年代に四天王が抱いた問題意識というのは極めて重要だと思います。彼らのポピュリズムに対する認識はまさに運動論の本質を突いたものであると言えます。ポピュリズム運動というのは一過性のものである、情緒的なものだ。従って、このシングルイシュー(中絶の問題とか家族の問題ですね)をポピュリズム運動に終わらせてはいけない。という認識を彼らは強く持つわけです。そして彼らはポピュリズム運動を永続的なグラスルーツ運動――草の根の運動へと転換するような方法を模索していったのです。そのために保守は、新しい政治手法を確立しなきゃいけない、と訴えました。もう40年も前ですけれども、この人たちのアイデアにはほんとに私自身も舌を巻きます。こうした運動論の視点からの分析というのは、日本ではなかなかできません。
 次に、彼らが掲げた保守の勝利の戦略についてお話しさせていただきます。
 まず資金収集です。pac(政治活動委員会)がちょうど1972年にできます。ちょっと簡単にご説明しておきますが、pacは、企業とか何とかといろいろありますけども、原則、アメリカの政治資金というのは個人献金しかありません。日本のメディアの報道はたまに間違っています。gm社がこれだけ献金したと報じていることがあります。これは正確に言うと間違いです。個人が献金をする際には、何処に所属しているかを明記するので、その所属の合計額が政治資金報告書に記載されるのです。資金収集については、ニューライトは、pacを非常に上手に使いました。
 次にダイレクトメールを選挙にうまく使ったということです。現在ダイレクトメールは、当たり前ですね。当時のダイレクトメールは、今でいえばeメールみたいなものです。オバマがやったネット選挙みたいなものです。こういった選挙の先駆けがリチャード・ヴィゲリなんです。いわゆる商品開発の戦略を駆使し、これらを選挙に転嫁させていったのはヴィゲリなんです。この戦術のお陰で、保守のコミュニケーション・ツールは飛躍的に拡大したのです。
 次にポール・ワイリック氏がやったことについてお話します。日本でいいますと、彼の戦略は「マルチ商法」になってしまうかもしれません。当時、タッパーウェアみたいな日常製品を販売するために、アメリカというのは広いですから、地域がら訪問販売を各地域でやるわけです。そのトップのセールスマンを引っこ抜いてきまして、タッパーウェアなどの日常商品を販売する家庭パーティなどの席上で、道徳的な話をするようにさせたんです。オルグさせたわけです。キリスト教会系統と一緒に、道徳の問題を話してモラルマジョリティーという保守系のグラスルーツ団体をつくってしまったわけです。アメリカは市場経済の国ですから、商品を売るためにはいろんなノウハウがあるんです。そのノウハウをぜんぶ選挙に転嫁させて組織化させようとしたのが、ワイリックの手法だったのです。時間がないと思いましたので、参考資料として、内国歳入庁(irs)についての資料をご用意させていただきました。簡単に述べます。国税庁に相当するのがirsですけれども、そのコードに501c3団体と501c4団体と527団体があります。簡単に覚えていただきたいんですが、501c3団体というと公益性の高い財団です。これは所得税もぜんぶ免除されます。しかしロビーはやってはいけません。501c4団体というのがあります。これは、公益性は低いですけれども、非営利団体として登録されます。これはロビー活動ができる団体です。恐らく日本も、これから公益法人の改正が始まりますと、公益法人の認可を受けないで、一般社団、一般法人の名前を「・・・npo」と称して「ロビー活動」をしていくようになるのではないかと考えております。527というのは政治団体です。
 ワイリックは、501c3のシンクタンク――頭脳の部分と、501c4団体――手足の部分を、徹底的にシングルイシューに対応してそれぞれ設立しました。例えば、ライフル協会のシングルイシューの理念運動の理論武装をする部分を501c3団体で作り上げました。そして、ライフル協会がロビーをするために501c4団体を設立したのです。今日、ライフル協会は極めて強いロビー団体となっておりますが、この基となったのは70年台なのです。
 このように、ニューライトは、政治団体、それから選挙運動と政策運動を上手に有機的に絡め合わせて保守の運動体を作り上げていきました。今日の強じんな保守系グラスルーツ政治の基をつくり上げたのです。
 ここで70年代のニューライトとオールドライトの違いについて簡単に述べたいと思います。なんでこういう発想をオールドライトはできなかったのか。オールドライトはもともと社会問題に関心がなかったからです。ですから、彼らオールドライトは、社会問題をシングルイシュー化させて家族の問題などを重視するような発想と認識が無かったのです。ニューライトは、アメリカ人は信仰心が強いから彼らを動員できるような具体的なアジェンダを打ち出さなければならないと考えヘリテージ財団のようなシンクタンクを設立し、そしてモラルマジョリティーというロビー団体をつくって、中絶の問題を切り口として民主党とリベラルに攻め込んでいったのです。70年代はシンクタンクが山ほどできます。ヘリテージ財団もcatoも設立されました。簡単に言えば、ニューライトは、社会問題をシングルイシュー化して政治問題化し、そしてそれを公共政策として商品化しました。これがニューライトのやったことだと思います。
 「アメリカの『保守』を見る眼」はいま言ったことを簡単にまとめさせていただきました。時間の関係上、最後に、日本の保守への含意といいますか、インプリケーションについて、僣越ですが問題提起をさせていただいて、報告を終わらせていただきたいと思います。
 昨年、民主党によって本格的な政権交代がなされました。その結果「55年体制」は、終焉の時を迎えました。私は「55年コンセンサス」と呼んでいるのですが、日本もようやくコンセンサス政治の時代が終わろうとしています。その「55年コンセンサス」が崩壊して、これからの日本はどのような政治状況になっていくのでしょうか?私は、「55年コンセンサス」の崩壊は、日本における政策決定過程における「鉄のトライアングル(政・財・官)」が崩壊したことを意味すると考えております。「鉄のトライアングル」が崩壊しつつあるのではないか…。その時、保守はどうするのでしょうか。
 日本において「55年コンセンサス」が崩壊しますと、アメリカの70年代のアナロジーではありませんけど、日本でもいろんなシングルイシューが顕在化してくると思います。既に、色々なシングルイシューが顕在化してきています。コンセンサスが壊れるわけですから、これまで「こうなんだ」と上から言われたら「ハイ」と言ってたのが、そうではなくなります。上下関係もさらに崩壊していくことでしょう。業界も同様です。上意下達で業界がまとまるとは思えません。業界選挙も一つにまとまらなくなるでしょう。利害関係が縦型ではなくなるかもしれません。新しい「利益団体コミュニティ」が構築されていくことでしょう。利害関係というものがどんどん散在していきます。シングルイシューのさらなる顕在化は、恐らく政治の姿を変えていくでしょう。
 保守にとって、こうした状況は、本来歓迎すべき政治状況ではないかと私は思います。なぜならば、シングルイシューの多くは、社会問題だからです。社会問題は、保守の得意とするところではないでしょうか。教育問題など、今後いくらでも新しいシングルイシューが顕在化していくことでしょう。問題は、それらをいかにして「束ねていく」か、ということです。これらの社会問題を通じて資金収集するということも可能なのではないか。また、シンクタンクとの連携も可能なのではないかと。限りない可能性を私は社会問題の中に見るわけであります。
 生意気なことを申し上げるようですが、政財官の鉄の三角形が壊れるということはどういうことかといいますと、請願権についての国民の認識が新たな段階を迎えることを意味すると思うのです。どこの国の憲法でも請願権について定めてあります。アメリカにおいて請願権を行使する手法は「ロビー」なんです。アメリカでは請願権は、ロビー活動を通じて行使されます。例えば、議会に圧力をかけたり、ホワイトハウスに圧力をかけて、法案を通す。それが「直接ロビー」であったり「間接ロビー」であったりするのです。だからアメリカでは、ロビイストの存在が云々されるわけです。その多くは、胡散臭いものとして報じられますが…。
 翻って、日本における請願権の行使については、国会法に定められています。政治家を通して陳情をしなければならないのです。請願の方法まで「お上」が決めているのです。お上に手を合わせて「よろしくお願いします」ということになります。それが、日本人の請願権の行使の姿なのです。最近、鳩山さんが「新しい公共」という概念を打ち出されました。私は鳩山首相の演説を聞いて、501c3とか4とかを意識されてるのかなと思って驚きました。その真意は、良く分かりませんが、もし日本における請願権の行使の方法が変わるとしたならが、これはまさに「新しい公共」という問題に突き当たるのではないかと思います。
 これは自民党政権が決めたことですけれども、2013年までに現在のすべての公益法人のステイタスについて見直されることになっております。公益法人と一般社団や一般財団どういう区別があるかということになってきますね。例えば医師会というのは社団法人です。社団法人ですけども、献金するために政治団体も持ってるんです。社団法人としての医師会はどうするんでしょうか。501c3を目指すんでしょうか、それともロビー活動主体の4を目指すんでしょうか。
 今後、「55年コンセンサス」の崩壊が進行し、その結果として、本日私がお話しさせていただいたような政治状況に少しでもオーバーラップするような現実が現れてくるとするならば、その時は国民の請願権の行使に対する大きな、ある意味では革命のような政治状況が到来するかもしれません。その時までに日本の保守は、運動体を構築することができるのでしょうか。また、してもらわなければ困るという思いも込めて、報告を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

下村政策委員長
 貴重なお話、ありがとうございました。


質疑応答
下村博文政策委員長
 今日、谷川(弥一)先生も出席されてますけれども、長崎の知事選挙でも予想以上の差で勝利したのではないかと思いますし、また東京の町田の市長選挙でも大差で勝利した中で、いかにこれから反転攻勢をつくっていくかということですが、先生方からまずご質問・ご意見等があればお出しをしていただきたいと思います。
 まず、私のほうからひとつお聞きします。今後、このシングルイシューということ、運動体として……いま民主党、日本においても外国人参政権の問題とか夫婦別姓の問題とか、保守の立場から見ればこの国を解体させてしまうような法案が次々と出ております。今まで自民党が与党である間はこれらの政策についてはなかなか党内でもまとめきれなかったのですが、もう野党でもありますし、しっかりこういう部分について明確に反対運動等をしていくことが必要だというふうに思いますが、そういうふうにアメリカ的な保守のグラスルーツ的な部分から、どういうテーマとかイシューが日本において想定されるかどうかということについて、ご意見をお聞かせ願えればと思うのですが。
吉原欽一専務理事
 そのへんにつきましては、まさに下村委員長や義家先生がご専門でありますけれども、教育に対する不満。例えば今度のオリンピックを見ても、コーチや監督が服装一つを注意できない。テレビのコメンテーターの中には、あれも若者の一つのスタイルだと擁護する人もいます。こうした問題は、争点形成化という意味においては極めてクリアに教育問題として争点化することができると思います。事業仕分ではありませんが、良いことと悪いことを、クリアにできるものは徹底的に仕分けをする。曖昧な議論をしないで、先生方に徹底的に洗い出していただきたいのです。つまり、オリンピックに行って…税金で行って…最低限やってはいけないことがあるはずです。家族の問題、社会問題、教育問題など、クリアにできる問題があると思うんです。善悪についての問題を徹底的に洗い出していただいて、国民運動的に繋げていくという道はあると思います。
 ではどのようにこうした問題を運動体のレベルにまで引き上げていくかということについては、税制優遇措置の問題で日本とアメリカはぜんぜん違いますから、いきなりアメリカの保守運動の真似はできません。しかし、日本でも公益法人法が改正されて、2013年までに現在の社団法人も財団法人も「公益法人」を選ぶのか「一般法人」を選ぶのかについて各法人は結論を出さなければなりません。現在、日本の法人は岐路に立っているのです。いろいろな団体が、いわゆる「ロビー団体」として生きていくのか、「公益法人」として生きていくのかという選択に迫られています。将来的には、日本でも政策形成過程に係り合いを持つ法人(たとえばシンクタンク)が税制優遇措置を受けて、アメリカのような政策活動ができるようになれば、局面は大きく変わるのでしょうが…。現状においては難しいです。企業・団体献金を禁止して、そのかわり政党のシンクタンクに「献金」することになったとしても、日本でシンクタンクが政策形成過程の中で、影響力を発揮していくことはまだまだ難しいと思います。シンクタンクというのは、本来政党と一定の緊張感を持った距離を持たなきゃいけないと考えています。シンクタンクなどに資金が集まるような仕組みをどうか先生方も努力してつくっていただきたいと思います。そうなると、アメリカがいいとか悪いとかというよりも、そういう市民運動が保守の社会問題を巻き込んだ大衆運動に発展していくのではないかと考えております。
谷川弥一委員
 先生に対する質問をするのが筋なんですけれども、あえて別のことを言わせていただきたいんですが、なんで自民党は支持率上がらないんですかねということです。それを模索しようと思ってこんな勉強会してるんでしょうけれども、それは現状分析ができてないんだと思うんです、自民党は。その証拠に、例えば予算委員会の質問書はどうして決めてるんですか。テーマは何で決めるんですか。そういうことは勘ですよ。全部、私は感じるんですけど、感情と勘。それで勝てるわけないと。だから、ぜったい必要なことは現状分析なんで、国民は何が不満なんですか。何を求めてるんですか。そういうことをやってくれない限り……例えば、うちの長崎、結構ほめてもらってるんですが、あれは勝ったうちに入らないと言うとる。なぜならば、衆議院のときの1万票が増えただけなんです。それは要するに、プロレスラー――大仁田厚候補が出たからっちゅう人もおるんですが、これは民主党の票を取ったんですよ。違う。うちの票を取ってる(?)。要するに、社会に対する不満分子の票を取ってる。
 私は保守の再生……それはアメリカと日本は違います。ぜんぜん違う。だって、ここはメチャクチャで、哲学もない、思想もない、信念もない。何が欲しいのかというと。カネをくれるのに入れるわけでしょう? 子ども手当とか、高速道路がタダとか。バーッといくんでしょう?
下村政策委員長
 分かりました。まず吉原先生から見て、自民党の支持率が上がらないというのはどういう理由なのかということなんですが。
吉原専務理事
 私も谷川先生のおっしゃったことに概ね賛成です。今の自民党は、冷静に現状分析ができていないと思います。例えば、商売で言うと「商品化」という言葉がありますね。何でも「商品化」しています。僭越ですが、選挙も一つの商品として考えていく必要もあるのではないでしょうか。現状分析が十分にできていないということは、つまり商品を売るのに現状の市場調査が出来ていないということです。私は、市場調査を徹底的に冷徹にするべきだと考えております。世論調査も、どこかの調査機関に丸投げするというものではなく、つまり、定量的な世論調査だけを機械的にするのではなく、新しい商品を開発するときの世論調査のやり方を政党が取り入れてもよいと思います。フォーカスグループ調査です。何でも横文字になって申し訳ありませんけれども、どうやったら商品が売れるのか、定性的な調査を行うのです。20人ぐらいのグループを世代、性別、職業などに分けて聞き込み調査を行いというものです。政策を「商品化」していくわけです。もう既にこうした調査は政党によっては、取り入れていると思いますが、グループをリードする選挙の政策の専門家が日本では、圧倒的に少ないのです。いわゆる政策知識人が日本では圧倒的に少ないのです。
谷川委員
 ほんとに言いたいことは、自民党の大幹部の人たちはテレビ会社の首脳部と会えと言いたい。なぜなら、彼らはネットに取られてんですから。広告料、もうネットのほうが多くなってるんですよ。ということは、もう報道不況になってる。テレビジョン、新聞も。そうすると、もう一度、まともに考えりゃ、自民党に戻そうじゃないかと、どっか(笑)。本気で、明日のことを考えましょうよと。
わたしはそれ言いたいね。まず日本が進むために自民党がやらなきゃダメ。
下村政策委員長
 分かりました。せっかく吉原先生来られてるので、ちょっとテーマに絞りまして。
義家弘介政策副委員長
 今おっしゃった教育問題の争点化、これははっきりしていると思います。私自身も全国を回りながら、非常に期待も大きい一方で、例えば左翼の運動体、いま下村委員長とコンビを組んで徹底的に闘っているところでありますけれども、日教組ですね。今回、北海道の選挙において、ポーンと1600万円出せと。これは、組合ですから、組合というのは地方の人事委員会の認証によって成立する団体なわけですけれども、内部監査というか、収支報告を公開する必要がないんですね、現行の地方公務員法では。で、主任手当のプールだけで北海道は55億円ぐらいあるんですよ。それを運用した金利に対しても税金がかからないんですよね。つまり、左翼の運動体はものすごくカネを持ってるんですよ。組織力とカネを持っている。それを背景にして影響力を行使しているわけです。
 一方で、我々が目指す教育再生の思いというのは、ものすごく草の根で思いを共有できるという部分は大きいんですけれども、いかんせんカネが全く集まらず運動の展開が限定され「点」で終わってしまうというところなんですね。だから、最後に例えば選挙となったときに、じゃあ、保守教育というものを争点にしておカネが集まるかって、実は集まらないんですよね。一方で、日教組なんかを支持母体にしていると、もう何千万というカネが投入されていくわけですよ。ここでいつも、教育においては正論を言うほうが敗けていく。そして既得権益を持ってるほうが勝ち続けていく。これが戦後六十数年の歴史だったと思うんですけれども、まっとうな教育のありようというものを訴えるものが一つの運動体として力を得るためには何が必要だと吉原さんは考えられたか、ぜひ教えてください。
吉原専務理事
 いま義家先生がおっしゃった状況というのは70年代から80年代のアメリカにおいて保守派が直面していた政治課題に非常によく似ています。組合と資金調達の問題は、アメリカの保守にとっても非常に大きな壁でした。アメリカ政治では、戦後労働組合は、資金調達と集票の面において非常に大きな力を持っていました。労働組合は、民主党の「選挙マシーン」となっていたわけです。しかし、労働組合が選挙におカネを投じるということが、70年代にアメリカでは政治資金違反となっていくのです。これを契機にアメリカ政治において労働組合の政治力は徐々に低下していきます。日本でも今後アメリカにおける連邦選挙委員会のようなものを設立して政治とカネの問題を徹底的に取り締まっていくという選択肢もあると思います。アメリカの戦後50年代から60年代の保守は、現在の日本の保守がおかれている状況などとは比較にならないくらい悲惨な状況に置かれていました。こうした保守の閉塞状況を打ち破ろうと闘ってきたのが、先程お話ししましたニューライトの面々です。既に指摘しましたように、彼らは新しい政治手法を駆使してリベラルと旧い保守派と闘っていったのです。
 アメリカの教育でいまリベラル系のティーチャーズ・ユニオンに匹敵するほどの政治的影響力を持っているのは、保守系ホームスクーラー連合です。全国に300万人ぐらい散在していまして、それぞれが司令塔となってグラスルーツの連合体を形成してゆくのです。ホームスクーラー連合は、教育問題については、保守の一大勢力です。ホームスクーラーは、学校に行かずに自宅で勉強しています。パブリックスクールに行ったら、国旗を無視した教育を科せられたり、信仰を無視した教育をされるという理由で、地域の学校に行くことを拒否した人々です。リベラルな教育をされる公立学校には行きたくないという人々は沢山います。従ってこうした地域の人々がそれぞれの科目を受け持って家族で子供たちを教育するのです。ある子供のお父さんは数学が得意で、隣のお母さんは国語が得意だから、といって互いに科目を分散して受け持つのです。現在アメリカ教育におけるホームスクーラーの存在は、政治にとても影響力があります。
 アメリカの大学は概してリベラルです。オバマ大統領の08年大統領選挙の時、最大の資金供与者――もちろん個人献金ですけど――は、カリフォルニア大学です。カリフォルニア大学自体が大統領選挙に資金を出すことはできませんが、カリフォルニア大学所属の個人の献金額を合計するとカリフォルニア大学がオバマ候補にいちばん多くの政治資金を提供したということになるのです。ハーバード大学の献金合計額も上位にランクされています。しかし、ティーチャーズ・ユニオンについて言えば、地域によってはその組織率はどんどん落ちてきています。一方で、教育についてはホームスクーラー連合の横の連携が強力になってきています。
義家政策副委員長
 我々も組合の違法な政治活動に対して議員立法を用意してずっと……2/3持ってるときにしか成立できないという思いで私自身強く下村委員長とも主張したんですが、当時、公明党の連立政権だったものですから、公明党自身もリベラル色の強い政党ですし、なかなか組合に踏み込めないまま、実は……自民党は通ったんですけれども、そして野党に転落してしまったんですね。いま自民党は野党として立ち位置を、これを加えるところで探っていると思うんですよね。公明党との関係をどうしていくのかというところでもたぶんすごく探ってて。公明党は比較的したたかにそのへんのところを考えていると思うんですけれども、率直に先生の立場から……いま衆議院で実は自民党は審議拒否しております。これは、私が受け止めると筋が通ってると思うんですね。やるべきことやらなかったら審議にならないだろうと。しかし一方で、さきほど先生がおっしゃったように、マスコミでは、なんだ出てこないで、今までの野党と変わンないじゃない、みたいな論調なわけですね。この今の自民党の審議拒否について、先生の率直な感覚をまず聞かせてください。
吉原専務理事
 立場が私はそういう立場じゃありませんけれども、率直に申し上げまして、何を言ってもマスコミは面白おかしく書きますので、信念を持って審議を拒否されるのであるならばいいんじゃないですか。
義家政策副委員長
  何をすればいいですか。ただ拒否するだけじゃ流れないんですけども、拒否しながら何か……。
吉原専務理事
  「大きな政府」であるというレッテルを貼って、争点を形成し、一点突破、全面展開ですかね。
義家政策副委員長
 実は、それで連日、昨日も一昨日も、街頭演説を総裁をはじめやってるんですよ。私なんかは、外側からいま政策などを一生懸命、下村委員長とやってますけれども、感覚だと、例えば昨日、新宿で街頭したんですが、そのときこそ、都連で総動員をかけまして……選挙のときの最後の打ち上げぐらい、1万人ぐらい、各国会議員、都会議員、動員して、ドーンとやれば、それはマスコミ、報道せざるを得ないと思うんですけども、通行人と通勤客の前で一生懸命お話しをしているというので、この戦略の……目的の一点突破の選択と集中ができていない部分に、私、忸怩たる思いでやってるんですよね。
吉原専務理事
 生意気なことは申し上げられませんけども、義家先生が選挙に出られたときに、たしか埼玉で個人講演会をやられたと聞いております。そのときに集まった市会議員から話を聞いたんですけれども、自民党に入れたことのない女性のptaの主婦たちが300人ぐらい集まった。あれは自民党のもともとの人たちじゃないと聞きました。ですからやっぱり、教育の関心のある問題を争点化して先鋭化して徹底すると。そこには専門家を投入して話を徹底する。総花的にやってもあんまり意味がないような気が失礼ながらしますので、私は教育問題、特にそういうものは非常に重要なんじゃないかと思います。
下村政策委員長
 ありがとうございました。トヨタのリコール問題とかいろいろお聞きしたいこともあったんですけど、ちょっと時間がもう過ぎてしまいましたので、吉原先生、お忙しいところお越しいただきましてありがとうございました。ぜひアメリカの組合問題、参考にさせていただいて、しっかり建設的に我々も国会論議していきたいと思いますので、またいろいろとノウハウを教えていただければと思います。



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